【観戦記】ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦 永瀬拓矢二冠 対 藤井聡太七段~最高峰の相掛かり~

注意書き

将棋連盟の将棋連盟ライブ中継アプリ等(https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )を使って観戦を楽しんでいる方向けの将棋観戦記です。

ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

・棋譜と図面を使用しない

・読者の方が上記のアプリを使用して棋譜並べをする参考になるように、序盤の構想のどこがおもしろいのかや、終盤の注目ポイントを簡潔に述べる

・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ等 のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

対局者:永瀬拓矢二冠 対 藤井聡太七段

日付:2020.6.4

観戦記

ついにはじまった歴史を作るための戦い。

史上最年少タイトル挑戦に挑む天才藤井聡太先生に立ちはだかったのは、怪物永瀬拓矢二冠。

歴史的な舞台になりました。

研究仲間同士の激突で、少し前の将棋世界には、永瀬先生のインタビューで、藤井聡太先生にはやや負け越していると話されていたのが印象的でした。

私の戦型予想は

①矢倉(二人とも得意)

②相掛かり(力勝負)

③角換わり(基本)

この順番でしたが、②でしたね。

15手くらいからほとんど定跡化されていない局面で、まさに新時代の相掛かりでした。

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相掛かりは、本当に定跡化が難しくて、力勝負になりやすいですよね。

羽生vs森内百番指しや木村名人実戦譜、中原誠名局集とかで並べましたが、大名人たちの相掛かりは、非常におもしろくて独創的。

相掛かり=江戸時代から続く伝統的な力勝負の舞台で、時代の第一人者たちに愛された戦法ですからね。

序盤から、大駒が交換されるなどでかなりの空中戦的な進行になりました。

40手前後の攻防が、おそらく序盤のキーポイントですね。

飛車打ちが完全に勝負手のように怪しく、これを咎められるかどうかが今回のハイライトシーンのひとつ。

飛車を捨てて角を取った永瀬先生の構想がうまくいき、一気に有利な状況を作った印象ですね。

ここらへんで、どちらもまとめるのは難しいが、先手の方が分かりやすい攻めが多い展開になったんですが、さらに10手後、今回の対局の運命を分ける局面が発生しました。

54手目の後が今回の勝負を分けた手でしたね。

ここをしのげば、先手は攻撃を繋げやすくなる。

逆に、後手はしのがれてしまえば、継続手が難しくなる状況でした。

王の早逃げか、それとも、持ち駒を消費した安定的な金打ちか。

この2つの選択肢。永瀬二冠を長考に沈めました。

選んだのは、早逃げ。

そして、ここから繋がる天才・藤井聡太の攻め。

追い立てる先手に、逃げ切る後手玉。

「時計の針は元には戻らない。 だが、自らの手で進めることはできる」

新世紀エヴァンゲリオン 22話

この名言を思いだしました笑

一気に勝負を引き寄せた後手は、執念の粘りを見せる永瀬二冠を振り切り一気に寄せ勝ちました。

強すぎる。

そして、歴史は動きました。

屋敷九段の最年少記録を破り、ついに藤井聡太先生は、タイトル挑戦。

タイトル戦が楽しみです。

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【アベマ将棋観戦記】佐藤天彦 九段 vs. 稲葉 陽 八段~相がかりのねじり合い・200手越えの攻防~

注意書き

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ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

・棋譜と図面を使用しない

・読者の方が上記のアプリを使用して棋譜並べをする参考になるように、序盤の構想のどこがおもしろいのかや、終盤の注目ポイントを簡潔に述べる

・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ等 のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:第3回AbemaTVトーナメント

対局者:佐藤天彦 九段 vs. 稲葉 陽 八段

日付:2020.5.2

観戦記

少し遅くなりましたが、先週のアベマ観戦記です。

佐藤天彦先生vs稲葉陽先生。https://abema.tv/video/episode/288-23_s30_p36

いつぞやの名人戦と同じカードですね。

稲葉先生の恋愛エピソード(不良に囲まれた)という番外編も面白かったですw

https://abema.tv/video/episode/288-23_s20_p50(外部リンク)

ふたりとも、横歩取り不況の直撃を受けて、苦戦している感じですが、角換わりと相がかりや矢倉、雁木などに活路を見い出そうとしています。

今回は、相がかりですね。

UFO銀全盛期から、最近は早繰り銀・▲6八玉型・中段飛車などいろんな戦法が混在している力戦形が魅力。

選択肢が多すぎて、感覚が重要になってくる戦型です。

今回は佐藤先生の。▲2五飛車・3七桂馬・6八玉型です。

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感想(0件)

類似局面はこちらの本の第3章に解説されています。

先手は、中段飛車の可動範囲の多さで動きまくり盤上制圧を狙いますが、後手はそれを防ぐために軽いステップで対抗していくイメージです。

と思ったら、先手が右玉に変化しましたw

稲葉先生は、中住まいで対抗します。

左右の銀がドンドン前に出ていき、右玉を制圧しようとしています。

飛車対策の桂馬跳ねで角が使えなくなったので、後手は銀を積極的に動かしていきます。

お互いに厚みを作り出して、ねじり合いですね。

バランス型将棋のおもしろさがここですね。

盤全体の攻防です。

中盤は、個人的に広さがある先手の方が好み。

後手の思い切りの良さが光ります。

ねじり合いを制した先手が、主導権を握ります。

先手の広さを活かした逃げ方と逃げつつ相手玉の逃げ場を塞いでいく手法がすごいw

後手は逃げきれずに投了となりました。

今回のまとめ

・相がかりの自由奔放さ

・中盤のねじり合い

・佐藤先生の広さを活かした終盤術。

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【アベマトーナメント観戦記】本田奎五段vs豊島将之竜王名人~攻防の角と難解な詰むや詰まざるや~

注意書き

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ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

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今回の対局の基本情報

棋戦名:第3回AbemaTVトーナメント大将戦

対局者:本田奎五段vs豊島将之竜王名人

日付:2020.4.18

観戦記

さあ、アベマTVトーナメントの観戦記です。

チーム豊島vs三浦の戦いは相がかりシリーズになりましたね。

第二局は本田先生が豊島名人を逆転で破り、フルセットに持ち込みました。

本田先生の伝家の宝刀「相がかり」に対して、豊島名人はひねり飛車で対抗。

昭和期においては必勝戦法だと言われていたひねり飛車も、最近までは廃れていました。しかし、最近は復調傾向ですね。

ひねり飛車は、居飛車の中でも知らない人も多いので、ざっくり説明しておくと、「飛車先の歩を交換した後に、浮き飛車にして、飛車をひねるように石田流のように組む」戦法です。

坊主美濃に囲われることが多くて、一歩を持ち駒にして振り飛車の理想形に組める超攻撃的な作戦です。

詳しく知りたい方はこちらの本をどうぞ

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感想(0件)

本田先生は銀冠を作り対抗です。

豊島名人がうまくさばいたように見えましたが、やはり銀冠に組んでいる本田先生が形成有利になった感じ。

序盤で積極的に主導権を握りに行った竜王名人に対して、うまく対応して有利になった感じですね。

中盤の攻防の角の手筋は、本田先生の好手。

「手がない時に攻防の角は有効」と解説の藤森先生も言っていました。

なかなか難しい形ですが、豊島先生は、フォークの桂馬を使って玉頭戦も見せていきます。

逆転を狙う時は、玉頭戦が有力な選択肢です。短時間なのに、難解な終盤へ。

負けている時は、難解な局面に誘導。米長流の泥沼戦法に似ています。

しかし、最近のりにのっている本田先生は詰みを見つけて圧殺。

ひえ―凄い終盤

まとめ

今回の見どころ

・珍しいひねり飛車の序盤

・攻防の角

・難解な終盤と妙手で一撃で勝ち切る本田先生の終盤力。

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ぴよ将棋、三段を目指して始動(早繰り銀の感想戦)

はじめに

最近、激指の詰将棋レート戦をやっているんですが、ついに四段+まで昇段しました(^^)/

画像

さて、これで自信を手にいれたので、いよいよ、ぴよ三段狩りに挑んでいます。

目指すは、ぴよ将棋三段です!

現在の自分の棋力

道場三段、ウォーズ三段、激指15詰将棋レーティング戦四段+、ぴよ将棋二段+なので、全ゲームで三段に到達したいと考えています。

しかし、ぴよ三段は強敵。

なので、「相がかり」にしぼって対抗策を考えています。

どうして、相がかりなのか

① 自分が一番最初に覚えた戦法で、愛着がある

② ずっと指しているので、経験値が結構ある

③ ②の影響でぴよを嵌め殺しにする手筋を結構知っている&力戦形のほうがぴよは不得意(矢倉や四間飛車などの定跡形はかなり強い)

④ 自分が力戦大好きおじさんであるから

参考棋譜

簡単な解説

ぴよがかなり特殊な初手をしてきて、焦りましたw

ただ、惑わされることなく、相居飛車へと誘導。

この初手から、振り飛車にはならないので、安心して相がかり風の力戦に誘導しましたw

ぴよは結構序盤が甘いので、攻めが早い早繰り銀を受けきることができないときがたまに、ありますw

振り飛車党に言うと信じられませんが、ここは居玉の速攻あるのみ。

ぴよ側が自分の攻めに対する準備ができていなかったので、ここは攻めた方がいいという判断です。

使い慣れないと早繰り銀は王手飛車などの手筋が決まりやすいので、慣れるまでは大変ですが、ほとんどの居飛車戦法で使えるので、慣れておいた方が楽ですw

ちなみに、上の写真の金の動きが敗着です。

バランスが悪くなって、こちらから攻めが繋がりやすくなってます。

ここら辺はギリギリの直上戦です。ミスると即死なので、結構緊張感が強いです。

70手目は自分の勝負手(たぶん、疑問手)

角捨てからの、包囲網の構築を目指しました。自分に即詰みはないので、ぴよが逃げにくい状況を作って寄せ勝ちを狙う感じ。

この包囲網を活かして、一気に詰めろをかけて、ぴよが投了しました。

わかりやすい詰めろですが、意外とほどけないんですよ。

この後の展開として考えていたのは

「▲7七金打△同銀成▲同 桂△7八馬▲同 玉△7六金」とかで、ここまでやっても詰めろ継続。必死というわけではないんですが、分かりやすい展開が続くので、ぴよは悲観して投了したのだと思います。

さて、こんな感じで少しずつレートを上げていきます。

早く三段になれるといいな~

オールラウンダー、各種振り飛車・居飛車の特徴を語る&切れ負けに勝ちやすい戦法考察

はじめに

ということで、一応、最弱オールラウンダーである私が、自分で使った感覚からそれぞれの振り飛車・居飛車の特徴を語っていきたいと思います(笑)

ヘッドホンをして勉強をする人のイラスト(男性)

はたして需要はあるのか不思議ですが、とりあえず、書いていきますね。

振り飛車編

ノーマル中飛車

【メリット】

・居飛車急戦に強い。というか、振り飛車系で最強に近い。

・バランスがいいので、捌き合いに強い。

・居飛車の抑え込み、振り飛車の捌き合いのどちらの感覚も勉強できる。

・あわよくば、袖飛車に展開して、居飛車の玉頭を粉砕できる。

【デメリット】

・穴熊や位取りなどの持久戦に弱く、居飛車穴熊がわかりやすい天敵として存在している。

・囲いが、木村美濃or片美濃になりやすく、本美濃を好む固さ重視のひとから避けられる傾向にある。

【総評】

やはり天敵の居飛車穴熊が問題。

風車や矢倉流などの対抗策もあるが、玄人向けで専門家だけがなんとか指しこなしている印象。

中飛車(角道オープン型、先手中飛車・ゴキゲン中飛車)

【メリット】

・自分から主導権を握りやすい。

・角交換をすれば居飛車の穴熊を抑制できる。

・攻守のバランスがいい。

・居飛車感覚でも指せる振り飛車。

・現代の主流戦法なので、棋書も豊富

・相振りに弱いと言われるが、最近は中央からの急戦・左穴熊・左玉・振り穴といった対策も登場し復調傾向。

【デメリット】

・左金が囲いに活かしにくいので、守備力がほかの振り飛車に比べて弱い。

・超速や一直線穴熊など、居飛車側が穴熊にする対策が登場。

・5筋位取りで相手に穴熊を許すか、手損して角交換して穴熊を許さないかの判断が難しい。

【総評】

現状、もっとも主流になっている振り飛車。

指しこなすのにはバランス感覚が必要で、囲いが薄いのがネック。

ノーマル四間飛車

【メリット】

・整備された定跡。居飛車の急戦・持久戦どちらにも対応可能。

・左銀の自由度が高く、自分の苦手な戦法によって場所を使い分けることができる。

・厚みをもった玉頭戦の破壊力も高い。

・美濃・穴熊どちらも採用できる。

・天敵穴熊には「藤井システム」という切り札もある。

・ほかの振り飛車にはある序盤から角交換が発生した場合の大乱戦がない。

【デメリット】

・中盤の定跡が難しい。

・終盤勝負になりやすく、終盤力を特に必要とする。

・藤井システムの定跡が難解で、使いこなすことが難しいので、居飛車穴熊に苦しめられがち。

・相振り飛車の時に駒組が制限されやすい。

【総評】

根強い人気を持つ。

整備された定跡が非常に優秀なので、どんな相手にも終盤勝負に持ち込みやすい。

穴熊と相振りがネック。

角交換四間飛車(角道オープン型四間飛車)

【メリット】

・居飛車穴熊をゴリゴリに制限できる。

・主導権を握りやすく、自分から積極的に動ける。

・駒組・攻め方が非常にわかりやすい。

・美濃・穴熊どちらも選べる進展性。

・ノーマル四間飛車と違い、相振りにも有望。

・居飛車側の急戦策がない。

【デメリット】

・序盤から手損が多くなるので、終盤の力勝負が振り飛車の中で最難関クラス。

・スピード感覚が必要になる戦法なので、しっかりとした基礎が必要となる。

【総評】

急戦・穴熊・相振りに強いことが最大の魅力だが……

手損が終盤になって響きやすいのが本当に難しい。

《以下、後日加筆予定。三間飛車・向かい飛車を予定中》

2019.10.6追記

三間飛車



【メリット】

・今最も熱い振り飛車。

・急戦に強い。

・振り飛車の天敵居飛車穴熊に対しても、真部流・コ―ヤン流・三間飛車藤井システム・下町流・トマホークなどなど対策が豊富。石田流(後述)への変化もある。

・相振り飛車の花形であり、対抗形・相振り飛車どちらにも柔軟に対応可能。

【デメリット】

・さばきが重要となってくるため、手筋に知識とセンスが重要。

・変化が激しいものも多く怖い手順が多い。

・基本的に居飛車は持久戦でくるので、相応の終盤力が必要になる。

【総評】

現状、もっとも進化している戦法。プロ棋戦での登場も増加中。

三間飛車藤井システムやトマホークは反動がきついので、指しこなすのが難しい印象。

石田流(三間飛車)

【メリット】

・振り飛車の理想形とも呼ばれるさばきに特化した攻撃力のある駒組

・美濃囲いと最も相性がいい振り飛車

・穴熊にも比較的戦いやすい。角交換型なら穴熊自体を制限可能

・もちろん相振り飛車にも対応可能

【デメリット】

・序盤で角交換すると、大乱戦になる変化が多く準備が大変。

・ミスると簡単に飛車が頓死する。

・基本的に先手番用の戦法。後手番に採用する時は、4→3飛車戦法・2手目△3二飛など工夫が必要。

・居飛車側である程度拒否ができてしまう。

【総評】

メリットが最大の魅力。駒組の理想形で戦うのが楽しいが、序盤から激しい変化になりやすい戦法なので、事前準備が大事な戦法。

向かい飛車

【メリット】

・攻撃力がノーマル振り飛車の中で最も高い。

・ノーマル振り飛車の中で最も穴熊に対抗しやすい

・居飛車感覚で使いやすい振り飛車(抑え込み重視)

・先手相振り飛車の元主役だったので、相振り飛車にも対応可能。

・角交換にも強い

・仕掛けの権利が振り飛車にもある

【デメリット】

・基本的に居飛車の流れを見て組む戦法のため最初から狙うことが難しい。

・普通の振り飛車感覚で指せない

【総評】

ノーマル振り飛車の中で私が最も好きな戦法。

振り飛車よりも居飛車感覚が必要になることが多い。

ダイレクト向かい飛車


【メリット】

・わかりやすい駒組と強烈な攻撃力

・角交換四間飛車よりも一手得をしているので、終盤のスピード勝負でもその分得をする。

【デメリット】

・序盤から角交換するため、 ▲6五 角と打たれると序盤から大乱戦になる。

・力戦模様への変化が多く、まとめきる腕力に自信が必要

【総評】

わかりやすい駒組と攻撃力が魅力だが、佐藤康光会長のようなすさまじい将棋の腕力が必要になる。基本的に居飛車党の裏芸的な意味合いが強い振り飛車だと思う。

<番外編>2019.12.4追記 振り飛車党の方向けの駒落ち論概略

さて、ここまで振り飛車の各種特徴を見てきました。
さらに、振り飛車党のかたは、捌きが難しいとか、相振り飛車が苦手とかいろいろ悩みがあると思います。
そこで私がおすすめしたいのは駒落ち定跡です。

悩み別に駒落ち大好きな私がどの定跡を勉強すれば平手の悩みを解消できるのか紹介していきたいと思います。

・相振り飛車で端攻めが苦手

おすすめ定跡:六枚落ち9筋攻め定跡
相振りの端攻めの基本となる駒組の基礎を学ぶことができる定跡です。
まずは、これを何度も繰り返すことで、端攻めの基本を身につけることができます。

・中飛車や対居飛車持久戦で、位を取って陣形の厚みを作った後どうすればいいのかわからない。

おすすめ定跡:二枚落ち銀多伝
この定跡は厚みをどのように作って、どう生かしていくのかを自然に見つけるための定跡です。

この理想形を作った後、いかに攻撃を組み立てるのか?
広さを活かして、相手の猛攻をどうかわすのか。
指せば指すほど厚みの活かし方を学ぶことができます。

・さばきが苦手

おすすめ定跡:香車落ち上手

香車落ち上手は、振り飛車にしないと厳しい状況で、居飛車から角の突撃をされても、香車が取られないなど上手が駒を捌きやすい状況なので有利になりやすく駒さばきを練習するにも最適な手合いです。

三間飛車・四間飛車・中飛車など自分の好きな振り飛車を使って、相手の攻撃をいなすさばきかたを実戦で学んでください。

居飛車編


角換わり


・緻密に作られた定跡
・難解な変化を多数含み陣形のバランスがいい腰かけ銀定跡、火力抜群の棒銀・早繰り銀、力勝負になりやすい右玉、桂馬損すら辞さない猛烈なポン桂定跡など指し手の個性が出やすい。
・研究を活かしやすいのでプロに大人気(裏を返せば、研究にはまってなすすべもなく負けることもあり、一部の定跡では詰み付近までの研究が進んでいる。

矢倉


・元将棋の王道戦法
・左美濃急戦・雁木の発展で、数が激減
・後手からの猛攻をしのいで戦う受け将棋になりやすい
・土井矢倉の登場などで、新しいステージに突入
・金矢倉や片矢倉まで組めれば、かなり粘りやすい形になり、一局の将棋を堪能できる。

雁木


・遅れてきたオールドルーキー
・江戸時代から指されていたが、ついにソフトの影響で大ブレーク
・守備力は矢倉に劣るものの、火力・陣形のバランスの良さは雁木が優る
・研究が進んだことでプロの将棋からは減少中

相がかり


・現在、角換わりと人気を二分している居飛車の稼ぎ頭
・手の自由度が高く定跡化が難し
・攻撃力・バランス・守備力、指し手がどれを優先するかで自由に駒組を変えることができる。
・将来的に角換わりにとって代わる可能性もあると筆者は予想中

横歩取り


・相居飛車の中で最も大駒が飛び交う大乱戦
・急戦の場合、短手数で勝負がつきやすくはめ手手順満載の定跡となる
・持久戦の場合でも、一手バッサリの手順が多いので駒組のバランスをとることが難しい。
・プロの対局でも結構浮き沈みが多く、流行するかどうかの波が大きい。現状は青野流・勇気流が下火となり、やや苦戦気味。
・後手側が戦型を選べるので主導権を握りやすい

居飛車総評


事前の研究量
横歩取り>角換わり>>矢倉>相がかり・雁木
のイメージです。相がかりと雁木は力戦模様になりやすい。逆に角換わり・横歩取りはしっかり勉強しないと怖くて指せませんw

ガンガン攻めたい人
・雁木
・角換わり棒銀・早繰り銀
・横歩取り

受け将棋
・角換わり右玉
・矢倉

バランス型
・相がかり
・角換わり腰掛銀

大まかにいうとこんな感じのイメージです。

ちなみに、最小限の勉強で相居飛車をしたい場合は↓

角換わり(必須)

矢倉or雁木(どちらか必須)

横歩取り(先手番で一手損角換わりする場合は不要)

相がかり(拒否可能)

よって、角換わりは必須で、矢倉か雁木を勉強すれば一応、相居飛車は指せるようになるのですw

角換わりも難しい腰掛銀を選択せずに、棒銀・早繰り銀でOKなので、意外と居飛車ってハードル低いんですよ(簡単とは言っていない)

コラム:短時間切れ負けに勝ちやすい戦法考察

ウォーズの三分切れ負けが一番得意なので、その経験から導かれる勝ちやすさの法則を考えていきます。クエストの2分切れ負けは逆に短すぎて苦手なんですが(小声)

①主導権を握りやすい将棋をする


これが一番勝ちやすい。
攻めと受けだと、受けのほうが慎重に時間を使わなくちゃいけない。だから、自分から攻めて相手の持ち時間を消費させましょう。


居飛車でも振り飛車でも主導権を握りやすい戦法を採用するのが勝ちやすくなるポイントです。


②流れ弾を避けるために、囲いをしっかり作れる戦法を選ぶ


これも大事。
読み抜けで流れ弾に被弾。そのまま即詰みで試合終了。あるあるですね。
基本的に、振り飛車なら片美濃以上、居飛車ならエルモ・雁木以上の囲いがあると安心です。


③序盤の研究をしやすい戦法を選ぶ


できる限り序盤で時間を節約するための戦術です。
相手がどの戦法で来ても選択できる戦型で、序盤の手順が一定であると最高ですね。
これで時間を節約しましょう。

④相手が見たことがない局面に誘導する


これも勝ちやすいです。奇襲戦法で自分はよく知っているけど、相手は全く知らないみたいな局面であれば一方的に時間を蹂躙できます。

では、具体的になにがおすすめか?

①中飛車


先手・後手でも採用でき、仕掛けの主導権も握れる振り飛車一押しの戦法。
対抗形・相振りどちらでも主導権を握りやすく囲いも安定するのがいいですね。

②石田流


こちらも積極的に主導権が握れて、囲いも安定しやすいのがベスト。
また、中飛車以上に奇襲戦法との相性もいいので、囲いを犠牲にして奇襲に移ってもいい柔軟性も魅力

③角交換四間飛車


こちらは囲い・序盤のわかりやすさが最大の魅力。逆棒銀などで主導権も握れる。
終盤が難しくなりやすいですが、序盤で節約した時間を投入しましょう(笑)

④雁木


そこそこの硬さと強烈な攻撃力を両立できるのが魅力。
相居飛車の時の第一選択肢だと思います。

⑤横歩取り(後手番)

自分しか見たことがないような局面を作りやすく後手番から主導権を握りやすい。
囲いが薄いのがネックだが、事前研究があれば後手番で狙う価値あり。

⑥筋違い角


意外と四間飛車+美濃囲いを作りやすいので安定性が高いうえに、奇襲攻撃も可能。
短時間での切れ負けで勝ちやすさが光る。

⑦居飛車穴熊・振り飛車穴熊


やはり、固さは正義。ちゃんと序盤研究をしておかないと相手に抑え込まる危険性があるが、研究しておけば最強の囲いが手に入る。
勝ちやすさNo1は伊達じゃない。

失われた戦法を求めて③~丸田祐三名局紹介~

ついに将棋ラブコメも15万字突破です(^^)/
『おれの義妹がこんなに強いわけがない ~妹とはじめる将棋生活~』

ということで、今回は、丸田祐三九段の十八番。「9七角ひねり飛車」、通称「丸田流ひねり飛車」のおもしろい名局です!
丸田祐三九段は、将棋連盟の会長も務めた名棋士です。
A級24期、棋戦優勝10回、タイトル挑戦4回と凄まじい実績ですね。

これを上回る成績を持つ棋士はそういないはずです。
歩の使い手としても有名で「小太刀の名手」という異名もありました。
最後の大正生まれの棋士として、95歳まで存命で、将棋界の長老的な存在でした。

特にNHK杯には強く、3回の優勝経験をもっています。
今回もNHK杯の名局です。あいては、加藤一二三九段。お互いに、NHK杯を得意とした大棋士同士の対局になっています。

1965-02-06 NHK杯 丸田祐三 vs. 加藤一二三(外部リンク)

炸裂したひねり飛車!
今は対策が確立し、絶滅しかけていますが、おもしろい戦法です。相がかり大好きな自分としては、一度は極めてみたい戦法の一種。角が端に上がるのが、丸田流。飛車を一気に捌こうとする豪快な戦い方です。

お互いにミスをし合い、形勢が変わりまくる大乱戦。
最後に詰みを見つけたのは、丸田九段でした……

投了図は以下の詰みです。
△1五玉(26)▲2六銀打△2四玉(15)▲3五銀(26)△1三玉(24)▲2五桂打

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