プロ棋士の棋風研究<第4回 戸辺誠七段>

ご好評いただいている棋風研究もついに第四回ですね。

今回は、戸辺誠七段です。

はじめに

振り飛車党の若き旗手として活躍されていますね。

ゴキゲン中飛車・石田流など現代振り飛車の使い手として知られていて、相振り飛車における戸辺流・後手石田流の「4→3戦法」などを奨励会時代に開発した若き天才ですね。相振り飛車の定跡の進化は彼と菅井先生によって現在の源流が作られていると言っても過言じゃありません。

経歴

加瀬純一門下。

兄弟弟子に、佐藤和俊先生(三間飛車藤井システム・振り飛車穴熊の使い手)・遠山雄亮先生(ゴキゲン中飛車における丸山ワクチン対策の「遠山流」の開発者)がいて、みんな振り飛車定跡の整備に功績が大きいんですよね。

師匠の加瀬先生も振り飛車党なので、貴重な振り飛車一門です。

1998年の第23回小学生将棋名人戦で3位、2006年に20歳でプロデビュー。

翌年、竜王ランキング戦6組で優勝。

2009年度の期王位戦予選で、森内九段、久保棋王(当時)を破り挑戦者決定リーグに進出。決定リーグでは羽生善治名人に勝ち、羽生とのプレーオフに進出するなど大活躍し将棋大賞の新人賞を受賞。

2010年に竜王戦5組優勝。

佐藤天彦(元名人)、糸谷哲郎(元竜王)、広瀬章人(現竜王)と将来を期待されてきた逸材です。

棋書の出版も多く、わかりやすい名著「石田流を指しこなす本」などを発表するなど、アマチュアの振り飛車党にとってはとても貴重なプロ棋士の先生です。

戸辺本にほとんどはずれがないので、石田流やゴキゲン中飛車、相振り飛車本の第一候補ですね。

棋風

純粋振り飛車党。

三間飛車の石田流を得意として、中飛車と使い分けている。

直近では三間飛車4割・中飛車3割・相振り飛車3割くらいの割合で使用している。

対石田流の△1四歩戦法(先手がつきかえしたら相振り飛車にして端に傷を作り、つきかえさなかったら突き越して先手の囲いを棺桶美濃に強制させる戦法。この流行で石田流がプロ棋界から激減した)発見後も、石田流を使い続けている貴重な振り飛車党です。

するどいさばきと華麗な一手で一気に攻め切る攻める振り飛車党。

なんでも、アマチュア時代の次の一手集中勉強法で作った棋風なんだとか。

詳細はこちらのインタビューをどうぞ。

棋士の本棚フェア 第1回:戸辺誠七段 【外部リンク】

エピソード

お父さんが有名なお米農家で、テレビ番組でもたまに特集されている。

ファンや棋界へのサービス精神が旺盛で、解説・若くして弟子を取る・名著を量産するなど広報活動や布教活動にもとても熱心な棋士。野球の始球式でボールを投げるなどユニーな活動も。

今後もドンドン将棋界を盛り上げて欲しいです。

【将棋】鈴木大介『角交換振り飛車【基礎編】』(浅川書房)レビュー

ということで、今日は将棋本のレビューです。

鈴木大介『角交換振り飛車【基礎編】』(浅川書房)です。

浅川書房と言えば、有段者御用達の出版社さんですね。

名著が多く出版されていて、はずれなし。

この本ももちろん大当たりですw

というのも、浅川書房さんは結構有段者向けの難しい棋書もたくさん出すんですが、この本はかなりわかりやすい。

というか浅川書房クオリティで、級位者の方向けに書かれた本のような位置づけです。

つまり、すごくわかりやすくて、実戦でもよく見る手順が満載です。

角交換振り飛車って、序盤で角交換する都合上、結構落とし穴が多いんですよね。

ただ、基本的な駒組と攻め方が分かりやすいので、初心者の人でもやりやすい。

この本も角交換振り飛車の基本となる攻め筋を一番最初の章で3つに分類して、解説してくれる親切設計。

角交換振り飛車(角交換四間飛車・ダイレクト向かい飛車・3三角戦法・ゴキゲン中飛車などなど)を覚えたい人が一番最初に手を出すべき本がこちらの一冊です。

その後に『角交換四間飛車を指しこなす本』などに移行すると挫折知らずに問題が解けるはずです。

この本では以下の3戦法が紹介されています。

①△3三角戦法

②角交換四間飛車

③ダイレクト向かい飛車

この3戦法。△3三角戦法は00年代中盤~後半に流行った戦法で、今は廃れ気味ですが、ここは絶対に読んでおいた方がいいです。

この戦法紹介に、角交換振り飛車の基礎がすべて詰まっていますw

基本的な駒組。居飛車を手詰まりに追い込む方法。3つの基本的な攻め方。

ぶっちゃけこの章を完璧に理解できたら、角交換振り飛車だけで初段になれるレベルじゃないかなとw

この章を読み終わったら、角交換四間飛車・ダイレクト向かい飛車、自分がやりたい角交換振り飛車の章を読みましょう。

そして、専門的な棋書にステップアップしていってください。

おどろくほど理解できるようになっているはずです。

有段者の人でも、角交換振り飛車をやったことがないひとはここからスタートするといいと思います。

そして、藤井先生の指しこなす本などにステップアップして基礎を作るのがおススメです。