前回の記事はこちら
はじめに
昨日ツイッターで実況したぴよ帝vs激指15の対局ですが、かなり盛り上がったので、ブログの方に感想戦と言うことで、一手ごとの解説を書きながら、取り上げていきたいと思います。
先手がぴよ帝、後手が激指15です。みなさんの事前予想はこんな感じです↓
序盤
▲2六歩
ぴよが、飛車先の歩を突いて居飛車を明示。後手も飛車先の歩を突けば、相がかりになりやすい初手。
△3四歩
対して激指は角道を開く。これで相がかりの可能性はグッと減った。
▲7六歩
ぴよも角道を開く。相居飛車なら横歩取りや一手損角換わりになりやすい局面だ。
△5四歩
激指は意外にも中飛車を選択した。ちなみに、このまま三間飛車に振るゴキゲン三間飛車という手もある。
▲6八玉
中飛車になることを予想して、玉の囲いを急ぐ一手。
定跡ならば、▲2五歩or▲4八銀が多い
△5二飛
やはり、中飛車。ゴキゲン中飛車という形だ。
▲7八玉
囲いを急ぐ一手。この局面なら ▲4八銀 のほうが主流。
△5五歩
五筋位取り中飛車が完成した。
中央の位を取っている影響で、開戦のタイミングを選びやすく、敵陣への圧迫感も強い形。
中飛車の理想形の一つで主導権を握りやすいと言える。
ちなみに、相手が ▲4八銀 を選択していれば、角交換して角交換振り飛車にする変化も有効。
▲4八銀
ここから超速や一直線穴熊を繰り出すことができる。対抗形において最も基本となる銀の位置。
△6二玉
後手も囲いにいく。中飛車の場合は基本は片美濃囲いだが、金美濃や片銀冠、穴熊など選択肢は多い。
▲5八金右
これにて居飛車の舟囲いが完成。
△7二玉
激指も囲いへと向かう。
▲9六歩
振り飛車穴熊をけん制。
△9四歩
端歩を確保して、将来の逃走経路を確保する意味がある一手。
ここが突かれた場合は基本的に美濃囲い系列になりやすい。
▲6八銀
中飛車の中央突破を警戒して、中央を厚くする。
持久戦よりも急戦になりやすい一手。
一直線穴熊の可能性はなくなった。
△8二玉
振り飛車の定位置
▲4六歩
少し前に流行した対中飛車▲4七銀型を志向する一手。
押さえ込みたい居飛車vsさばく振り飛車の勝負になりやすい。
超速が流行してから数を減らしている。
△7二銀
片美濃囲いが完成。
▲2五歩
居飛車が角の頭を狙う。
△3三角
角が動いて、居飛車の攻撃に備える。
▲7七銀
左銀も中飛車の抑えに向かう。囲いが薄くなる代わりに、抑え込む力が強くなる。
△4二銀
中飛車の左銀も動く。
最終的な行先は中央・左翼・右翼すべてに選択肢がある。
▲6六銀
左銀が中飛車の抑え込む形。かなり中央突破が難しくなる。
△5四飛
5六歩から歩交換をするのがよくある手。こちらの浮き飛車の場合は軽快なフットワークで攻守に飛車を使うような形になる。
※△5六歩▲同 歩△同 飛 ▲4七銀△5一飛が一般的な流れ
▲4七銀
▲4七銀 型が完成。左右の銀の活躍で、中央突破はほぼ無理となる。
△5三銀
左銀が積極的に前に出る。
▲3六歩
桂馬の利用を促進することもできるし、三筋を焦点にもできる攻撃的な一手。
△6四銀
3二金もありえる。その場合はバランスを取る一手。
この手は中央の厚みを維持しつつ、隙があれば囲いに合流。もしくは玉頭戦もしかけることができるバランス型。
△4四銀も普通に見えるがその後の▲3七桂△3五歩▲4五歩で銀がいじめられて居飛車が有利となる変化になる。
なので、今回の場合は中央の厚みを維持する場合は右に使う方が得。
▲3八飛
個人的に意外な手だった。3七の桂馬跳ねが第一感。
たしかに、ノーマル中飛車に対して、袖飛車からの急戦(加藤流袖飛車)があるが今回は角道オープンの中飛車。
△5二飛
三筋からの攻撃に備えて、飛車を引く。
さばきを目指す一手。
中盤
▲3五歩
ついに開戦。振り飛車の弱点である角頭を狙う。
△同 歩
取るしかない。
▲同 飛
こちらも取る一手。
一見主導権を握っているが……
ここまでぴよがやや有利
△4四角
中飛車のバランスの良い陣形を活かした飛車の迎撃方法。成りこめる隙が無い。
▲3八飛
一度退散。
△1四歩
6二角も有力。端歩を突いて、バランスを崩さないように調整していると考えられる。
▲4五歩
角をいじめて攻撃の主導権を確保
△2二角
△6二角 と比較してやや守備的な指しまわし。
端角も見せて、お互いに駆け引きが発生している。
▲3六飛
浮き飛車にして、攻防に効く場所をキープ。
△1三角
角を攻撃に使う端角。中央突破を示唆して中央の攻防を有利に展開する意味もある。
▲3四飛
次の一手で端を強襲して、角をいじめる意図がある。それが正しければ歩を得するが、読み抜けがあった。
△3二飛
これが振り飛車の強烈なさばき。
飛車を逃がしたら一方的に成りこめる。飛車交換に応じても、玉形の差がもろにでるためにっちもさっちもいかなくなる。
囲いと陣形のバランスを活かしたさばきの手筋だ。
▲同飛成
強制的に飛車交換に応じざるを得ない
△同 金
振り飛車のさばきが成立。
▲5五銀
歩を確保するとともに銀交換を打診。さすがに飛車だけでは攻め切れない
△6五銀
さすがに交換拒否。交換せずとも、飛車の打ち込みから玉形の差を活かしてリードを広げることができるので、交換するメリットが薄い。
▲4六銀引
角の軌道を封鎖し、中央からの揺さぶりを防ぐ。
ただ、6六銀のほうが、守りに使いやすいような気はする。
△3三歩
角の成りこみを防ぐ。陣形のバランスの良さから、飛車の打ち込みをそこまで恐れる必要がない。
▲4一飛
陣形バランスと次の一手で飛車は封じ込める。
これが中飛車のバランスの良さのおそろしいところ。
△3一金
飛車を追い払う一手。端角の利きを有効活用している。
▲4三飛成
たまらず逃げる飛車。美濃囲いから遠い場所に逃げるしかなく攻撃が遅れる。ここで中飛車のカウンターチャンス到来
終盤
△4九飛
強烈な飛車の打ち込み。リードが広がる。玉頭の銀、右翼の飛車で包囲網を作りつつある。
▲3二歩
歩を使って金をいじめる。2二金と避ける辛い手もあるが……
△7六銀
激指は攻め合いを選択した。
8七銀成という攻め筋から舟囲い潰しの選択肢も広がる非常に攻撃的な指しまわしだ。
それに対して同玉とすると、6九の金が取られる。
▲3一歩成
ぴよも攻め合いを挑む。しかし、包囲網の形成速度を考えると攻めが遅い。
△4六角
意外な一手が飛び出した。 8七銀成 のほうが有力だと思うが、角をさばいても囲いの差で勝てると踏んでいるのだろう。やや疑問手。
▲8六金
取った金で 8七銀成 の筋を消す。上側の包囲網を打破できる可能性が出てきた。
△4二歩
歩のただ捨てに見えるが取ってしまうと、▲6四角があり、龍取りかつ玉頭戦で勢いを与えてしまう。歩で龍の勢いを消す絶妙手だ。1九角成もあるがそれだと攻め合いになってしまい紛れる危険性がある。
▲5三龍
取れないのでかわす。
△6七銀成
一見タダに見えるが、同金のあとに相手の銀が無防備になる。上からの制圧を諦めて横からの攻めに特化する方針のようだ。ただ包囲網を壊すのであれば 8七銀成 の方を優先すべきだったと思う。窮余策の意味合いが強い。
▲同 金
取る一手
△4七飛成
銀交換を成立させて、角も救う。
▲6二歩
片美濃崩しの常とう手段がこの歩打ち。
かなり固さを崩すことができる。将来の決め手にもなりやすく積極的に狙いたい一手。
△7一金
逃げるしかない。少しぴよ将棋が持ち直してきた。
▲5八銀
固さを取り戻すための一手。▲6八金引~▲6一銀打の流れが私の第一感でした。
ぴよらしからぬかなり守備的な一手。悪手寄りの疑問手。
△3八龍
攻めをかわしつつ、王を視界にとらえる。
▲2一と
さすがに駒が足りないので桂馬を補充した。
個人的には5一龍のほうが美濃崩しに直結しやすいイメージ。 一手前に▲6八金引~▲6一銀打 のほうが良かったと思う。
△4七銀
駒不足の先手に対して、早い攻めに移行する。やはり ▲5八銀 の消極性が裏目に出てしまった可能性が高い。
▲6八金引
横からの攻撃に備えて守備を強化する。しかし、後手の攻め筋がしっかりしているので非常に厳しい。守備の強化時には金銀を連ねた形を作ると安定しやすい。
△5八銀成
攻める。守備駒と攻め駒の交換は、攻め駒の方に分がある
▲同金上
同金寄よりも若干横からの攻めに強くなりやすい形。ぴよも懸命に粘っている。
△1九角成
ぴよの手駒では美濃崩しができないので、自玉が安全だと確信し今まで遊んでいた角で持ち駒を補充。冷静な攻撃を見せる。
▲5一龍
美濃崩しに繋ぎやすい場所に龍が移動。しかし、これは形作り的な意味合いが強い。
激指に大きなミスがあれば逆転してやると言う宣言。
△4六馬
馬の戦力を玉の包囲に使う一手。
しかし、歩を打てない6筋に香車を打った方が攻めが早い。
かなり激辛な遅攻だがやや疑問手。
▲1一と
攻めも受ける術も少ないので、持ち駒を補充。
これで底香や合いごまに使える香車が手に入る。
よって、1手前は、香車打ちのほうが激指的には得だった。
△6四香
さきほどから指摘している香車打ち。順番がぎゃくになってしまった。
▲6七香
獲得した香車で合い駒。二歩になるので歩が打てない。
△同香成
香車同士を交換。金の連なりを崩せる。
▲同金右
これで横からの攻めに弱体化。
△5八銀
厳しい一手。先手が同金としてしまうと、龍が玉に迫り敗勢となる。
▲5六銀
大劣勢であるものの、何とかしのぐ一手。
次の一手の他に△5九銀打▲7七玉△6四香で「詰めろ」をしかける手順もある。
この手に有効手を指せなかったら「△6八銀不成▲同 金△6六金▲7八玉 △6七銀成▲同 銀△同 金▲6九玉△6八龍」などの手順で詰み。
△6四香
こちらが先でもかなり厳しい。
▲6六香
合い駒するしかない。
△5九銀打
先ほど言及した形に合流した
▲7七角
王の逃げ道と角を守りに使うための一手。しかし、絶妙手の決め手が次の一手となる。
△6七銀成
これを見てぴよ将棋は投了した。
以下、
▲同 銀△6八銀成▲同 角△8八金▲7七玉が最有力。
△8八金 を同玉とすると龍が迫り即詰み手順となる。
その手順は以下の通り。
(▲同 玉△6八龍▲7八金△7九角▲9八玉△9七金▲同 桂△7八龍▲同 銀△8八金)
上に脱出させるしかないが、その後の経路がほぼない。
かといって、即詰みを狙える手順も存在しないので、ぴよ帝の投了はやむなしという状況だった。
今回の企画はこちらの本に触発されました。
とても名著なのでぜひとも読んでみてください(‘ω’)ノ