【自作小説】もう遅いよ

「おれをそんな目でみるんじゃねえ」

私は、彼の怒声とともにはげしい痛みを感じた。どうしてこんなことになってしまったのだろう。こんなはずではなかった。たぶん、彼もそうおもっているはずだ。ふたたびおなかを蹴られる。

「いたい、もうやめて」とかすれる声で私はそういった。意識がもうろうとする。

彼の足音がきこえる。どんどん小さくなる。ばたんという扉の音とともに、私は意識を完全に失った。

目がさめると、彼の姿はどこにもなかった。テレビから流れる深夜の通販番組の声だけが、部屋に鳴りひびいている。私はすべてを失ってしまったことに気がついた。きっと彼はもう帰ってこない。そう考えると、絶望感が体を包みこむ。蹴られた体のふしぶしが痛い。もうなにもする気がおきない。消えいる声で私はつぶやいた。

「わたしはこんなことをするためにいきてきたの?。ママにあいたいよ」

テレビは依然として音を流し続けている。番組は朝のニュースになっていた。幸せそうな家族がインタビューに答えている。

「これからどちらへいかれますか?」

「家族みんなで海外にいってきます」と父親が笑顔で答えていた。

うらやましい。私だってこんなふうに笑っていたかった。家族旅行なんてほとんどしたことがない。

昨日だって、きっかけはささいなことだった。なんでわたしだけが。涙があふれてくる。もうやめよう。なにもかもすべて終わりにしたい。

いつのまにか眠ってしまったようだ。どれだけ寝ていたのかもわからない。テレビからは陽気な音楽が聴こえてくる。

夢をみた。小さいころの夢だ。ママは元気で、私をだっこしてくれていた。2人でどこか遠出したのかな。見おぼえがない景色を2人でみている。とてもたのしかった。帰りにママとファミレスでごはんをたべた。お子様ランチを幸せそうにたべる私。ママも楽しそう。

「もうあなたも3歳になるのね。パパがいなくてさびしくない?」

「うん。ママがいるからさびしくないよ。ママだいすき」と私は答えた。

「じつはね。……ママ再婚しようと思うの」

「サイコン?サイコンってなーに?」

「あなたに新しいパパができるってことよ」

「あたらしいパパ?よくわからないよー」

「そうよね、フフ」

夢が終わってしまった。そのあと私には新しいパパができた。最初は幸せだった。3人の生活は、なにもかも新しくてたのしかった。でも、それは長く続かなかった。

5歳のとき、ママが死んだ。交通事故だった。私は「死」ということがよくわからなかった。いや、いまでもよくわかっていない。私は「ママはどこにいるの?」と聞いて大人たちを困らせた。大人たちは「ママはお星さまになったんだよ」と彼らは答えた。大好きなママにもう会えないという事実だけが残った。生きているなかではじめてわきでてくる気持ちに私は泣いた。

「ママにあいたいよ」

やさしかった新しいパパは悲しんで、お酒ばかり飲んでいた。話しかけても、答えてくれなくなった。そんな状態が長く続いた。でも、私が小学校に入学したとき、彼はとてもよろこんでくれた。

「ママもおまえのランドセルすがたみたかっただろうな~」

毎朝、これが口癖になっていた。休み時間はいつも本ばかり読んでいた。本のなかに、ママがいるような気がしていたのかもしれない。

また、ねむくなってきた。テレビでは、よくわからない外国の映画が放送されている。

夢のなかで私は中学生になっていた。

わたしは友達とはしゃいでいる。

「ブレザーがもうすこしかわいかったらよかったのにねー」

なんだか気が抜ける。でも、とてもたのしそう。

次の場面で私は大人になっていた。彼と出会いしあわせそうに笑っている。

「だいすき」

「おれもすきだよ」

こんな会話が延々と続いている。

目がさめた。結局、すべて夢だった。

かれに蹴られたおなかがまだいたい。もうごはんもなん日もたべていない。どんどんちからがぬけていく。

トークばんぐみの音が流れていた。それもすこしずつ聴こえなくなっていく。なにもみえない。もうすぐママにあえるかもしれない。

ドアがひらいたきがする。かれがかえってきたのだろう。でも…

「もうおそいよ」

すべてがひかりにつつまれた。

テレビではニュースが流れていた。

「さて、次のニュースです。今朝、○○県△△市のアパートの一室で女児の遺体が発見されました。隣人からの通報で判明し、遺体はその部屋に住んでいた9歳の女児だと思われます。また、女児と同居していた父親は、現在、行方をくらませており、現在、県警が重要参考人として捜索作業をおこなっております。近所の住民の話では、女児の泣き声などがときおり聴こえており、常態的に虐待がおこなわれていた可能性もあります」

【自作小説】『だいぶ』

おれは今、車で空を飛んでいる。

月の光がうつくしい。どうしてこうなったのか。よくおぼえていない。気がついたらこうなっていた。

昨夜、友達に誘われて、飲みにいったのはおぼえている。日ごろの愚痴をいい合い、いつの間にかこうなっていた。

どうやら、いつもの癖で飲酒運転をしてしまったらしい。おそらくスピードを出しすぎて、曲がりきれず川へと落ちようとしているのだ。

道から川まで3メートルくらいの高さだ。本来ならすぐ落ちるはずだ。なのに、すべてがゆっくり動いている。なんという体感時間だ。これが走馬灯というやつか。

家族から、何度いわれてもやってしまった飲酒運転。これがその報いなのか。親もあきれるだろう。いや、そもそもこれは親が悪いのだ。なぜなら、これは親譲りの悪癖だ。おやじだっていつもやっていた。

あの強面のくせに、小心者のおやじはいつも酒に逃げていた。いわんや、息子のおれもそうなるに決まっている。

嫌なことがおきれば、酒が忘れさせてくれる。そんな悪循環に気がついて、自己嫌悪に陥っても、酒だけはおれの味方だ。その嫌悪も、飲んでさえすれば忘れられるのだ。家族はそんなおれを責めるが、その責めさえも酒をのむ口実になる。最高だ。まさにロックンロール。笑えてくる。

川がどんどん近づいてくる。酒を飲んで、こうなるんだ。ある意味では本望なのかもな。おれらしい最期だ。

どぼん。激しい水音とともに、おれの意識は消失した。

 ※

月がよく見える。

「痛てえな」

気がつくと俺は川に浮かんでいた。全身が痛い。落ちた拍子に、車内を脱出して川に投げ出されたらしい。運がよいんだか悪いんだか。酔いも醒めてしまった。

そこで、俺は気がついた。飲酒運転をして事故ってしまったという現実に。これはまずい。まずすぎる。なにがまずいって、俺は社会人だ。それも結構お堅い職業。こんなことがバレれば、一瞬にして社会的に抹殺されてしまう。テレビのニュースとネットでの楽しい、楽しいお祭りさわぎが待ち構えている。

早く証拠を消さなければ。とりあえず、あのぷかぷか浮いている車をどうにかしなければ。目立ちすぎる。あの真っ赤な車体が、いい逃れができない現物証拠となっている。

「おりゃあああ」俺は全力で、サイドガラスにパンチを浴びせる。

「うう」声にならない悲鳴をあげる。そりゃあ割れるわけがない。さっきの事故でも割れなかったのだからな。しかし、ヒビは入った。

土手の石を使えばよいじゃないか。俺はいそいで土手にいき、大きめの石を拾い、ガラスにぶつける。

「パリィン」

綺麗な音でガラスが割れた。水が車内に勢いよく入っていった。

だが、おかしい。車が沈まない。

そこで俺は重要な事実に気がついた。

「浅いんだ、この川」

俺の足も川底についている。はじめからわかっていたのだ。どうして気がつかなかった。残ったのは、ぷかぷかと浮かぶ赤い乗用車と不自然に割れたサイドガラス。怪しい、怪しすぎる。このまま放置したら、明日の朝には家に、紺色の制服をきた人が来てしまう。いや、現行犯でなければ……

「なんかすごい音したぞ。おい、あそこ車が浮いてるんじゃねぇか」

近くに住民が集まってきてしまった。もうここまでなのか。

完全に青ざめた俺は、勢いよく川の水を飲みはじめた。最後のわるあがきだ。こうすればアルコールが薄れるかもしれない。

ひどい味がする。あきらかに泥川だ。水質だってよくない。急な吐き気とともに、俺は意識を再び失った。

月だけが俺を見つめている。遠くでサイレンが鳴り響いている。

見知らぬ男たちの声が聞こえる。

「きみ大丈夫か。」大丈夫なわけないだろ。

「おい、佐藤。こっちに来てくれ。誰かもうひとりいる。車から逃げ遅れているみたいなんだ」

【書評】初恋/カラマーゾフの兄弟

はじめに

ということで今日はロシア文学の書評です。

トゥルゲーネフ『初恋』、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の感想になります。

ネタバレ有の書評になります。ご注意ください。

『初恋』

(あらすじ)
 著者の半自伝的な作品。ある日、別荘の隣に引っ越してきた女性に心奪われてしまったウラジーミル。彼女に言い寄るたくさんのライバルと競合するも、彼女が選んだ男は意外な人物だった。

(感想)
 さて、今日は調子が良いので昨日読んだばかりのトゥルゲーネフ、沼野恭子訳『初恋』(光文社古典新訳文庫)を紹介します。前に、岩波文庫版か何かを借りて読んだのですが、光文社古典新訳文庫版も読みたくなり買ってしまいました。これは読みやすいですよね。さて、ネタバレ有なので気を付けてください。

 ネタバレとは何かといいますと、思い人の意中の相手は、実は主人公の父親だったという衝撃の展開です。彼女が主人公に対して、コロコロ態度を変えていたのはこれが原因。父子の関係が悪化するのかと思いきや、主人公が父親を尊敬するというのは一種の性の目覚めですね。「男」という競争を勝ち抜かなければいけない強い存在への憧れという風に言い換えても良いでしょう。

 本質的な「恋」とは何か?。私は「破壊」だと思います。恋人との従来の関係の破壊、家族との関係性の破壊。痛みというものでもそれをポジティブに変えてしまう魔法の薬。劇薬だからこ魔法が切れた時の反動が大きいのでしょうが。だからこそ、始めるときに壊す勇気は必要になる。壊すことが産み出すことにもつながる。不思議な関係ですね。

 初恋というだけあって、主人公の精神状況もグルグル変わります。そして、それが世界の見え方にも影響してくる。風景描写がそのまま、主人公の状況を暗示している美しい作品でした。

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『カラマーゾフの兄弟』

ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(新潮文庫)です。成金の男が殺された犯人を捜す推理小説のようで、成金の男の子供たちとその周囲の人びとが繰り広げる思想小説でもあり、神という存在にまで言及する神学書でもあります。

 この物語全体が一つの「神殺し」だと思います。神という存在を否定した人間が、徐々にその思想を広げていき、その支持者が最終的には神までも手にかけてしまう。一種の科学批判でもある物語です。科学という新しい「神」を作り出した人間が、今までいた宗教的な「神」を抹殺してしまう。

 神がいるからこそ人々は罪を背負ってしまうのか?神が作り出した罪を否定して人は生きていけるか?。「神」は「心」とも言い換えることができるかもしれません。人間性の中には「神」という存在がいなくてはならないのではないか?。とても考えさせられる物語です。

『東大卒プロゲーマー』/『中国工場の琴音ちゃん』書評

はじめに

さて、今日の書評は『東大卒プロゲーマー』(PHP新書、ときど著)・『中国工場の琴音ちゃん』(一迅社)です。

本の虫のイラスト(男性)

『東大卒プロゲーマー』

 もうこの本はタイトルのインパクトが凄いですよね。自分も思わずタイトル買いをしてしまいました(笑)。東大卒の著者がいかにプロゲーマーになったのか?そもそもプロゲーマーとは何なのか?。日本ではまだなじみのない「プロゲーマー」に迫る一冊です。

 「プロゲーマー」とは何か?著者は「ゴルフのタイガーウッズいるでしょ?あれの、規模の小さいバージョンですよ」(18頁)としています。

 なるほどわからん(笑)。要は「企業とスポンサー契約を結び、そのスポンサー料と大会の賞金で生計を立てている」ゲーマーということです。

 ではどんな生活をしているのかと疑問に思うでしょう。それがとてもストイック。普通の会社員がはたらく時間と同程度ゲームの練習し、体力をつけるためにジム通いに励む毎日だそうです。

 著者のときどさんは東大卒で、自分の好きなことを職業にしている。一見、挫折なんか知らない人生のようにも思えます。でも、実はそうではないみたいです。いくつものハードルを乗り越え、今の居場所にたどり着いている。

 例えば、彼は格闘ゲームのプロですが、合理性や効率を求めて黄金パターンを見つけてそれを極めていくスタイルでした。しかし、このスタイルでは限界が来てしまう。理論だけの観戦していて面白くないスタイルの限界。そのスランプを乗り越えるための苦悩。そして、障害を越えた先に見つけた解答とは何か。それがカッコイイのでぜひ読んでほしい一冊です。

『中国工場の琴音ちゃん』

さて、次は井上純一『中国工場の琴音ちゃん』(一迅社)です。著者は『中国嫁日記』という4コママンガブログで大人気な方ですね。今回は日本人が経営する中国のフィギュア工場が舞台。

 「日本のオタク産業はこういう工場が支えているんだな~」ととても勉強になりました。しかし、中国人の労働意識はとてもシビアです。完全な文化の違いですね。

 例えば、旧正月の連休で里帰りした工員たち。なんと7割が帰ってこない(笑)。他にも、一つの工場で長く勤めて倒産したらどうするんだとばかりにライバル企業にどんどん転職するなどなど。まるっきり日本の環境とは違うので読んでいて驚くことばかり。

 一番好きなエピソードを紹介します。
 
 中国で反日デモが盛んだったころ、舞台となる工場でもデモをやるという話が出た時の工員の一言。

  「愛国は素晴らしい。でも、国はお前をそんなに愛してないぞ。働け。」(67頁)

 工場を壊したら、給料がもらえないだろうという一言。非常にシビアです。


 

『 イワン・イリッチの死 』・『獄中からの手紙』書評

はじめに

今回の書評は。トルストイ『 イワン・イリッチの死 』 ガンディー『獄中からの手紙』の二冊について書いていきたいと思います。

『 イワン・イリッチの死 』

死という魂の解放

 さて、今日はトルストイ『イワン・イリッチの死』の感想です。

 タイトルが少し危ない感じになってしまいました。

 この作品は、ロシアの官吏が不治の病におかされ、死にいくまでを描いた小説です。

 目前に控えた死への恐怖と病魔によって引き起こされる激痛。

 とても重苦しい小説です。

 生々しい苦痛がずしり、ずしりと伝わってくる。

 しかし、最後にある苦痛からの解放。

 この瞬間に一気にすべてが解き放たれる感覚。

 この感じがやっぱりトルストイだな、読んでいてよかったなと思います。

 最後の瞬間、主人公が苦痛から解放され、死に喜びをおぼえるシーンがとくに印象的です。

 単純な苦痛からの解放ではなく、今まで自分を制限していた肉体との決別。

 そして、広がる魂の世界。

 そこにたどり着いた喜び。

 無限の連鎖によって、引き起こされる「魂の不死」。

 トルストイ作品の味わいが濃縮されております。

 魂の不死について語ると長くなるので、過去のこの記事を読んでください(笑)

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『獄中からの手紙』

完全なる無私とそこからもたらされる真理

 さて次はガンディー 森本達雄訳『獄中からの手紙』(岩波文庫)を紹介します。

 この本は一九三〇年に刑務所に収監されたインド独立の父ガンディーが弟子に宛てた手紙をもとにしたもので、彼の思想が凝縮された一冊です。

 多くの東洋思想の根幹には、「捨てる」ということがあると思います。例えば、仏教や老子、夏目漱石、『菜根譚』などなど。その中でガンディーは最も「我」というものを捨て去ることを目指した人だったのだと思います。特にアヒンサー(非暴力)を「愛」と定義し、それを直接的な暴力だけではなく、精神的な嫉妬や独占欲まで広げているのが面白いです。そこまで捨て去ることができれば、「無私」という境地にたどり着けますね。

 その無私というものを持ちえたガンディーだからこそ、インド独立の父という象徴になることができたのだと思います。手っ取り早く独立できる「武力」というものを用いず、あくまで「愛」を全面に押し出すことで目的を達成させる。無私の境地にたどり着けた人物だからこそ取り得た独立だと思います。

 仏教といった捨てる思想を生んだ土地で、その思想の結晶となった人物が活躍したのは運命的なものを感じますね

【創作論】創作者が、小説投稿サイトを楽しむうえで大事なこと・長編完結を目指すうえで必要なこと

「小説家になろう」「カクヨム」で小説を投稿したいと思っている方向けの記事です。


「小説家になろう」「カクヨム」で投稿している私が、思う大事なことを書いていきます。
どうやって投稿を楽しむか
長編小説を完結させるために必要なこと

1.人と比べ過ぎない(楽しむ)


これが長く続けるコツです。投稿サイトには、アニメなどメディアミックスの成功例・書籍化作家さんがゴロゴロいるわけですが、いきなりそのレベルにたどり着けるひとなんて、一部の天才だけです。そんな天才たちと比べて、ポイントやPVが伸びない自分に焦ってはいけません。普通の人がその次元に達するには、継続して努力しなくてはいけません。
私の好きな将棋の大名人「羽生善治」は、「才能とは継続できる力」と言っています。続けていけば自ずと能力は伸びていきます。
なので、マイペースに卑下することなく、書き続けましょう。
比べるにしても、ほかの人の小説を読んだりして、こんな小説を書きたいといい影響を受けるようにしましょう。他人と比べてネガティブになるのではなく、ポジティブにモチベをあげるようにしていくべきだと思います。
くれぐれも不正にはしってポイントを底上げしたり、ブックマークの数に一喜一憂しすぎる暗黒面に落ちないようにしましょう。いろんな意味で、作家生命を狭める原因(炎上・書籍化しても打ち切りなど)になります。

2.交流を楽しむ


これも長く続けるコツ。
せっかくの投稿サイトです。ほかの人の作品もたくさん読みましょう。
新着やランキングでおもしろそうな作品を読んでいく。そして、おもしろかったら感想やレビューを書く。誤字を見つけたら、誤字報告をしてあげる。
たまに活動報告やtwitterにお邪魔する。
これをするだけで、ほかの方々との交流は生まれていきます。
そうすれば世界は広がって、自分の作品もおもしろくなる。自分を変えるためには、外部からの影響を受けるのが一番早いです。
現状の自分だけの世界で、創作しても先細りしてジリ貧になります。
どんどん自分を変えていき、おもしろい作品を書いていきましょう。

3.長編を完結させるために必要なこと


それは、強い精神力です。
長編小説は、フルマラソンに似ていて、完結させることはかなりの精神力が必要です。
投稿サイトには、完結できずに更新がとまる(俗にいう、「エタる」状況)の作品のほうが多いです。
まずは基礎体力をつけましょう。
短編をたくさん書くと、物語の完結までの道のりをイメージしやすくなります。そうすることで基礎体力が身につきます。
エタることが少なくなれば、それだけユーザーからの信頼を勝ち取れます。
完結できる人のほうが少ないので、長編を完結させることができるだけで、希少価値が生まれるのです。
自分の作品は、結構ニッチなテーマが多いんですが、それでもほとんどの長編作品でPVが数万~数十万くらい取れているのは、そう言った信頼関係が読者さんと作れているのが多きいのだと思います。
長編完結率98%が、私の唯一の売りですw

4.厳しい感想をもらっても引きずりすぎない


これも難しい問題です。
たまに、かなり手厳しい意見をもらうことがあります。
私も結構ありますw
こういう時は、あまり気にしすぎることが無いようにしましょう。
動揺すると継続更新に影響します(;’∀’)
わざわざ感想をくれるかたです。粗末にしてもいけません。
「アドバイスありがとうございます」とお礼を言って、直すべきところは直していきましょう。

くれぐれもSNSや活動報告などで、さらすようなことはやめましょう。
他のアドバイスしてくれるひとが委縮して離れていったり、炎上して作家生命を縮めることになりかねません。
モチベーションに重篤な影響があるときは、もう一度自作を読み直してみましょう。たぶん、おもしろいと思えるはず。
そして、自己肯定感を高めたら、もらった嬉しい感想やレビューを読み直しましょう。
これで私の経験上、精神的なダメージは癒えますw

『ハリネズミのジレンマ』

プロローグ

 部屋を出ていこうとする女の腕を、男は強く握りしめた。いつも優しく接してくれる幼馴染の意外なほど強い力に彼女は驚く。手につかんでいたはずのドアノブは、少しずつ遠ざかっていってしまう。金属の冷たい手触りがなくなり、彼女の手は少しずつ熱くなっていく。彼の手を無理やりほどくという選択肢は彼女には無かった。いや、選択権がなかったのだ。彼を一度、裏切ってしまったという罪悪感が、彼女の人生を変えてしまった。

 自分の腕が熱くなっていくことを自覚して、彼女はわずかに抵抗を試みた。それが無駄で欺まんだと知りながら。抵抗しなくてはいけない自分の運命を呪うことしかできない。

「ダメだよ、一輝《かずき》くん」
「好きなんだ、世界で一番、聡美《さとみ》のことが好きなんだ」
「だめ、お姉ちゃんを裏切ることになる。そんなことはできないよ」
「奏《かなで》のことを聞いているんじゃないんだよ。俺は、聡美の本心が知りたいんだ」

「そんな言い方ずるいよ。私の気持ちなんて、もう知っている癖に」
「知っているよ。でも、本人の口から聞かなくちゃいけない。そうしないと、俺たちは前に進めない」
「前に進んじゃいけないの。私が本心を言ったら、本当のことを言ったら、私たちは前に進んでしまう。でも、そんなこと許されちゃいけないんだよ。みんなが不幸になるし、誰も報われない。だから、私のことは忘れて。お願いだから、お姉ちゃんのことを幸せにしてあげて……」

「じゃあ、なんで…… あの時、自分の気持ちを押し殺そうとしたんだよ。そうしなければいけなかったんだよ」
「言えるわけないじゃない。そんなこと。私だって、いっぱい悩んだ。たくさん、傷ついた。ふたりのために…… ううん、私たち、三人のために、選んだのがこの結末なんだよ。お願いだから受け入れてよ。そうしないと、私たちはみんながダメになる。私の決意だって、なんのための決意だかわからなくなっちゃう」
「ここで、聡美の本心を聞かないと、俺だってダメになる。たぶん、聡美、お前もダメになる。そんな代償払ってまで進む、奏との未来にどんな価値があるんだよ」
 そう言って、男は最愛の人を力強く抱きしめた。ここに本来であればあり得たはずの未来が、再び生まれてしまった。彼女は、それを喜ぶ自分がいることに辟易する。

「メフィストフェレスと出会ったファウスト博士ってこんな気分だったのかもしれない」と彼女は思った。死後の世界での魂の服従を条件に、ふたりは現世の快楽を追求する。好きなひとにここまで言われて、抗えるわけがない。知恵の実によって失楽園した先祖のように、私たちは口をつけてはいけないリンゴをかじってしまう運命だったのかもしれない。

 どうして、知恵なんて身につけてしまったのだろう。
 彼女は祖先を呪った。
 知識や倫理観なんて、自分たちを苦しめるだけなのに。
 そんないろんな考えが彼女の頭の中で浮かんでは消えていく。

 でも、自分たちがファウスト博士にはなれないことも彼女はわかっている。この選択は、救済を祈ってくれるはずのグレートヒェンを殺してしまうものだから。これ以上はいけない。だから、踏みとどまって。彼女の願いは、簡単に壊された。
 彼にブレーキをかけるものはもう何もなかったのだから。

 窓から見える木の葉が、ヒラヒラと落ちていく。そのゆっくりした様子すら、彼女たちは見つめることができなかった。そんな余裕もなかった。

「聡美、俺はお前のことをずっと好きだった。世界で一番好きだったんだよ。お願いだ、本当のことを言ってくれ。それだけ聞ければ、あとは、聡美の決断を尊重する。聡美の願いを聞くから」
 男は自分がどれだけ残酷なことを言っているかわかってはいた。だが、このタイミングを逃したら、もう二度と聡美とは会えなくなる。そう確信していたからこそ、男は自分の無理を彼女に押しつけた。


 女はその言葉を聞いて、今まで、封印していたパンドラの箱を開いたのだった。

 何度も見た彼の部屋の天井をみつめながら…… 少しずつ、視界がぼやけていく。
 彼女は箱の中に残していた「希望」をついに開放してしまう。

「              」

 すべてを明かしたふたりの顔は、自然と近づいていく。それが本来ならばあり得たふたりの姿だったのだから。もうふたりを止めることは誰にもできなかった。自分たちですらそうすることはできなかった。

 ふたりは、お互いの体温を交換する。

 そして、彼らは一度だけの愛を誓いあった。その口づけの目撃者は、月明りだけだった。彼らが悪人であれば、何も問題はなかったのかもしれない。でも、彼らは優しすぎたのだ。
 自分たちの心を監獄へといざなう結果をもたらすと知りつつも、もう止めることはできなかった。

 外では、街灯が点滅している。
 真っ暗な部屋には、その点滅だけが唯一の光だった。

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PexelsによるPixabayからの画像(1枚目)

Suvajit RoyによるPixabayからの画像(2枚目)

将棋ラブコメ後の新作を考える

ということで今日は創作論です。

小説家になろうに投稿している『 おれの義妹がこんなに強いわけがない ~妹とはじめる将棋生活~ 』ですが、ついに20万PVを超えました。

将棋ラブコメという異世界ものの拠点であるなろうではマイナー分野で勝負しているので、こういう結果を残せたのは読者のみなさんのおかげです。本当にありがとうございますm(__)m

ということで、本作もいよいよ最終章間近。

単行本で言うところ5・6冊の分量で終えたいと思っているので、もうすぐ完結です。

いくつか次回作の構想を練っているので、そのメモ記事になります(笑)

読みたい作品があったら是非ともtwitterなどでコメントいただけると嬉しいです。

①将棋転生もの

こちらは、将棋ラブコメの延長線上ですね。

新人王戦で優勝経験まである奨励会三段【プロ一歩手前】が、年齢制限でプロになれなくて、失意のうちに、転生トラックに引かれてしまう。

目がさめた時に、彼は江戸時代に転生していた。

天才少年として二度目の人生も将棋にかける主人公は、やがて江戸時代最強の棋士として覚醒していく。

自分は古い将棋が好きなので、より自分の好みに全振りしてしまう作品です(笑)

江戸時代の棋譜を集めている人は少ないので、かなり自分のカラーが出せそうw

80%プロット完成中。

②三角関係ドロドロもの

主人公と幼馴染の双子ヒロインが織りなす愛憎もの。

前になろうに投稿した短編『病室の天使』の本編です(笑)

ドロドロして救いのない、胃が痛くなる作品を目指す。

あえて「ざまあ」要素も排除して、ひたすら読者を絶望の淵へと追いやる誰得作品。

ちょっと対象年齢層が高めになりやすい。

プロットほぼ完成。

冴えない彼女の育てかたの二次創作のために、「white album2」をプレイしていて浮かんだアイディアですw

あの作品のおかげでドロドロ三角関係を書きたくなりましたw

③冴えカノ二次創作

これはいまカクヨムに投稿している『冴えない彼女たちの育ちかた』とは別作品にする予定です。

あっちはイチャイチャものに対して、こっちは②と同じでドロドロもの。

原作終了後の倫也・恵・エリリの三角関係を描く。

②のアイディアから派生したもので、まだプロットも作れていない(;’∀’)

原作完結後に、あえて問題を掘り返すのは自分的にどうかと思ったりで、一番可能性が低いかも(;’∀’)

まとめ

現状は、この3点です。

あとはイチャイチャものも書きたいので、いいアイデアないかを検討中。

ちゃんとしたオリジナルのイチャイチャものは「あざとい後輩」以来書いていないので、書きたいんですよね。

もう少し精進しますw

あなたはどのタイプ? 小説創作スタイル論

ということで久しぶりに創作論を書いていきたいと思います。
今回は小説のスタイルについて。
小説を書くために何を重視するか。それを重視するとどんな小説になるかを考えていきたいと思います。

①文章を重視する


描写や文章を重視するスタイルですね。純文学が好きな人に多いタイプです。
暗喩や体言止め、韻などリズムを重視して、芸術的な小説になりやすいです。
一般受けよりも玄人向けになりやすいスタイルですね。
全体的に硬派な世界観になりやすく、自分の人生観や価値観が強く影響する小説を書く人が多いと思います。私の小説とは真逆にある小説です←
内省的な人が多いスタイルです。
芸術肌のひとが好みますね。

②ストーリーを重視する


私はこれです。
物語の全体像を最初に作って、エンディングから逆算して流れを作るスタイルです。
理路騒然とした安定感がある小説が書きやすいです。一方、優等生っぽくなりやすくて、良くも悪くも暴走が少ない。途中で中断して絶筆することが一番少ないのがこのスタイルです。最初に全体の流れが作るので、おもしろくなるかは前準備が重要となります。どちらかというと努力型に多いスタイル。
安定感がある一方、ドキドキ感が少なくなりやすいですね(自省)
ラブコメや恋愛もの、ヒューマンドラマを好む作家さんが多いイメージ。

③設定を重視する


こちらはぎちぎちに設定を重視するスタイルです。
SFや異世界系の作家さんに多く見られますね。
詳細な別世界を自分の中に作りこんで、その世界で登場人物を動かしていきます。
②と似ているようで、ちょっと違う。
まるっきり別の世界を創るので、②以上に事前の準備と、設定をつなぎ合わせる技術が必要になります。
理系のひとが多いイメージ。
スケールが大きい話を書きやすい一方で、序盤に設定の話が多くなりやすくて、読者さんが置いていかれしまいやすくバランスをとることがかなり難しいです。
かなりの技術と専門知識が必要となる職人肌の人が好むスタイルです。

④キャラクターを重視する


これもわかりやすい。
かわいいキャラや面白いキャラを作ってあとは自由に動いてもらう。
事前準備よりも即興的な技術が重要になってくるスタイルです。
調子がいいときは、どんどん話が進み、悪くなると簡単に更新が止まってしまう。
天才肌のひとに多いイメージです。
完結をあまり重要視せずに、プロセスのおもしろさを重視するスタイルともいえます。
魅力的なキャラが多く、ファンも付きやすい。
上を狙うのであれば、このスタイルが最もやりやすい。しかし、天才肌のため、作者が失踪してしまうことも多いです。なんとなく、この分類でいちばんマンガ家に近いイメージです。

まとめ

以上、私が簡単に4分類してみました。

創作を始めたい人は、どのスタイルでいくか考えてみると面白いかもしれません。

その他の小説関係の記事はこちら

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冴えカノSS解説

はじめに

 カクヨムに『冴えない彼女の育てかた』の二次創作SS『冴えない彼女の育ちかた』を連載しているので、そちらの解説になります。もうすぐ映画公開なので、勝手にどんどん盛り上がっていきます(笑)

 今回は、完全に自己満足なので、飛ばして読んでもらって大丈夫です。いろいろ書いていますが、完全に痛い妄想です笑。そう思って読んでください。以前、カクヨムにも同じ内容のものを投稿しています。

1.本作品のコンセプトについて

 簡単に、コンセプトについてですが、「原作やアニメでえがかれていなかった幕間を作者の妄想で書いてみよう」というものを設定しました。二次創作としては、なにをあたりまえのことをと言われてしまいそうですが、これが初の二次創作なので、そこを強く意識しています。

2.ヒロインたちの考察

 まず、これを書くのにあたって、原作『冴えない彼女の育てかた』のメインヒロイン加藤恵について、考えてみました。

 わたしが、一番最初に疑問に思うのは、加藤はいつどこの段階で倫也のことを好きになったのかについてでした。作中では、感情の増減の幅については語られていましたが、明確なタイミングについては語られていないのではないかと思います。

 なので、私としては「加藤の帽子が風に飛ばされて、アルバイト中の倫也がそれを拾いに行った瞬間」をそのタイミングに設定しております。

 つまり、原作の最初から、すでに加藤は無意識かもしれないが、倫也に対して一定の好意が存在しているのではないかという考えです。

 これについて、想定した根拠というのは、原作1巻で加藤が家族そろっての旅行を途中ですっぽかしたことをあげています。正直、これって倫也に対するかなりの好意を示す指標じゃないのかなと私は推論しているのです。

 そんな、痛い妄想をしていたら、できたのがこの二次創作の「第1話 約束の坂で【原作1巻 霞ヶ丘視点】」というわけです。これは、霞ヶ丘先輩の視点を借りて、作者の考えを書いているのです。

 原作第一部(原作7巻、アニメ2期最終話まで)について思うのは、加藤は結局のところメインヒロインに成りきれていなかったのではないかという妄想でした。

 1~6巻まで、ずっとメインヒロインポジションにいながら、最終的にエリリとの選択肢において選ばれなかった。メインヒロインになりきれなかった。だからこそ、彼女をちゃんとしたメインヒロインにするために必要だったのが、原作の第二部になるんじゃないのかと思うのです。

 そして、第二部につながるフラグとしては、エリリの自主的な退場が大きいんだと思います。

 エリリは、「退場した」とは思っていないと思いますが、やはり、倫也と才能のどちらを選ぶのかという段階で、彼女は後者を選んでしまったのが大きい。それは、作中作の「恋するメトロノーム」の最終段階の選択肢とも重なるところがあります。

 原作世界線上において、メインヒロインになりえたのは、加藤かエリリのどちらかだろうなと私は勝手に妄想しております。下記のような関係ですね。

加藤≧エリリ>詩羽>出海=美智留

 上記のエリリと詩羽の間には、たぶん大きな壁がある。

 エリリは、下手すれば加藤すら飲みこめる存在だけど、詩羽先輩がそうなるのはかなり難しいんじゃないか。

 でも、番外編として詩羽先輩がメインヒロインの『恋するメトロノーム』があるじゃないかというひともいるでしょう。

 あの作品は、倫也がゲームを作らない世界線ですよね。つまり、加藤との運命的な出会いは存在せず、それに触発されたゲーム作りもおこなわれていない。そうなるとどうなるか? エリリとの和解もおこなわれていなくて、喧嘩が進行中になっているということ。上記の関係から、上位ふたりが消えることで、詩羽が最上位になった世界線ということです。

 そう考えると、本当に詩羽先輩って不憫なポジションだなと思います。だからこそ、最終巻直前にすごく魅力的なキャラクターになっている。この二次創作でも、その考えが反映されております。