【詩】天空の梯子/青海/イルミネーション

「天空の梯子」

【本文】
空を見た。
雲が広がっている。
太陽は、雲の中に隠れて冬眠している。
気温は少しずつ下がっている。

空を見た。
雲が広がっている。
天空の水道が、蛇口を開いたようだ。
世界が潤っていく。

空を見た。
雲が広がっている。
空の水道工事は、終わったらしい。
水漏れは、もうなくなった。

空を見た。
雲が広がっている。
雲が少しずつ薄くなっていく。
光がもうすぐ見えてくる。

空を見た。
雲が少なっていく。
天空の梯子が地上に降り立った。
ここは楽園に変わった。

「青海」

【本文】

わたしは、空を見た。
そこには、青い海が広がっている。
どこまでも続く晴天の青さだった。
本物の海よりも広大で、穏やかな表情をわたしはみつめる。

ねぇ、この海ってどこまで続いているんだろうね。
わたしは、彼にふと聞く。

どこまでも続いているし、すぐそこで止まってもいるんじゃないかな。

彼は笑ってそう言った。

わたしは、不思議な気分になる。
この広大な海は、世界のどこまでも広がっている。
そして、ここが終点でもある。

人間って、出発点でもあって、終着点。
わたしたちは、笑った。

「イルミネーション」

【本文】

都会で見たイルミネーションはきれいだった。
でも、ここにはなにもない。
電灯すら探すのが困難なこの田舎にはなにもない。
最寄りのコンビニまでは徒歩50分、自販機までは20分の距離だ。

都会で見たイルミネーションはきれいだった。
でも、ここにはなにもない。
ここは少しずつ死に絶えていく。
若者はどこかへ行き、大人だけがここに残る。

都会で見たイルミネーションはきれいだった。
でも、ここにはなにもない。
散歩の途中で、田んぼを見た。
3つの灯り《イルミネーション》が輝いていた。

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【詩】「滝」/「ふとん」/「氷川」

「滝」

きょう、滝をみた。

みずが激しく流れ落ちていた。
その衝撃で周囲を濡らす。
わたしは、みずのカーテンに包まれた。

きょう、滝をみた。

みずは、まるでカーテンのようだった。
滝の裏側にいったい何があるのだろうか。
わたしには、なにも見えなかった。

きょう、滝をみた。

とおくで彼女を眺めているのに、ぼくには近くにいるように感じた。
少しだけど、体にみずを感じられる。
それは、まるで心のシャワーだ。

きょう、滝をみた。

滝は凍っていた。
みずは流れない。
おおきな、おおきな氷の壁がそこにあった。

ああ、生きているんだ。
わたしはそう思った。

「ふとん」

わたしは、ふとんにもぐる。
もぐったふとんは、まだ外気と同じくらいに冷たい。
わたしは、その冷たさが好きだ。
今日の出来事を思い返す。

わたしは、ふとんにもぐっている。
もぐっているふとんは、少しずつ温かくなっていく。
冷たさとあたたかさが同居する不思議な空間だ。
現実と夢がそこでは、同居する。

わたしは、ふとんのなかにいる。
もうふとんのなかは、温かかった。
あたたかさは、わたしを夢の世界へと誘う。
もう、わたしはふとんのなかにはいなかった。

「氷川」

朝、川を見た。

薄い氷が、川を包んでいる。
ところどころわずかに隆起し、ひび割れる川をわたしは見つめた。
息を少しだけ外にだす。
少しずつ白い煙へと変わっていく。

朝、川を見た。

薄い氷が、川を包んでいる。
小さな川だ。
庭の芝生を見つめる。
白いじゅうたんに変わっていた。
それは、道路まで続いている。

朝、川を見た。

薄氷に向かって石を投げてみる。
簡単に割れた。
それと同時に、石ではない物体が水面を跳ねた。
川はまだ生きていた。

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【詩】自作解説

いつも投稿している詩の解説です!

なろうでは『幼残香』というタイトルで投稿しています。



 

1.『幼残香』というタイトルについて

タイトルの『幼残香』というのは、わたしが考えた造語です。
「幼きころの感性を必死に集めて残った香」という意味合いで使っています。

はじめて、詩を書こうと思いついた時、なんとなくこどもごころに戻って書いてみたいと考えました。

しかし、わたしは成人の身。

ほとんど、幼少期の感性を失っています。

だから、思い出して、ひねり出して、なんとか集めたわずかな感性を文字にしております。

「どうか少しでも感性を集められますように」という願いをこめて『幼残香』というタイトルをつけました。

もうひとつのタイトル案として『幼残滓』というものもあったんですが、これはちょっと子供っぽくないので没となっています。

生まれてから、このかた、詩作など一切したことがありませんでした。

なので、完全に初心者の見様見真似になっています。

それでも、がんばって言葉を紡ごうと考えているので、よかったら読んでください。

わかりやすく、読みやすい詩というものをコンセプトに連載していきます。

2.簡単な方針について

前述のように、わかりやすい詩というものをコンセプトにしています。

なので、適宜、自作解説を入れていこうかなと考えております。

読み手の解釈を制限してしまいそうで、怖いんですが、わかりやすさ・意図を補完できたほうがいいのかなと……。

3.自作解説

「おとなって」

自分がこどものころ考えていそうなことをつづってみました。

書いてみると本当に嫌なこどもだったなと実感しております。

大人ってほんとうに偉いのか?が主題です。

次作も同じテーマになっていますが、やはり成長すればするほど、自分の限界というものを突き付けられてしまう。無数の選択肢をもつこどものほうがすごいんじゃないか。限界なんて、ないんじゃないか。

そんなことを考えながら、作りました。

②「難問」

難しいことを考えるひとが、大人のなかでは地位が高い。

じゃあ、この詩の最後の質問に対して、偉い人は答えることができるのか。

それは難しいんじゃないかなと思い書きました。

つくづく、わたしはひねくれております。

偉人が集まって、社会が発展していく。

ただ、社会の発展は、ひとの暴力性まで高めていくような気がします。

偉い人が作った世界は、本当にひとを幸せにしてくれるのか。

わたしは疑問に思ってます。

③「ダンボールの中のきぼう」/「青い空」

これは二作でセットです。

「ダンボールの中のきぼう」は、ダンボールをこどもの将来の比喩としてみました。

おもちゃ、お菓子、ようふく……。

詰まっているものはみんなが喜ぶ希望ばかり。

自分の将来は明るいと確信している幸せな子供たちを描いています。

対になるのが、「青い空」です。

戦禍に巻き込まれたこどもを主人公に描いております。

空≒将来が、青く美しいと信じながらも、現実の刃に傷だらけになっていく。

環境というものが変われば、「ダンボール」のなかにも希望を感じていたこどもでさえもこうなっていく。

②の世界が行き着く先になにがあるのか。

それともリンクしています。

 

ということで、とりあえず解説はここまで。

残りの解説はまた、後日に!

【詩】景色/かわ/あさひ

「景色」

わたしは、窓から外を眺めた。
田舎の景色が広がる。
灯りはほとんどない。
あるのは、暗闇によって姿を消した田んぼと、車のライトだけ。

なにもない世界が、わたしのまえには広がっている。

わたしは、窓から外を眺めた。
田舎の景色が広がる。
灯りは少し増えた。
新しくできたコンビニが、遠くでもわかるくらい光っている。

なにもない世界が、わたしのまえには広がっている。

わたしは、窓から外を眺めた。
闇夜には星々が広がっている。
なにもないからこそ見える灯りだ。
悠久の歴史が、わたしを照らし続けてくれる。

無限の世界が、わたしのまえには広がっている。



「かわ」

わたしは、川を眺めていた。

水は少しずつ流れている。
魚が飛び跳ねた。

わたしは、川を眺めていた。

河川敷には牛がいる。
のっそり、のっそり歩いている。

わたしは、川を眺めていた。

河川敷で、バーベキューをしている。
本物の牛の近くで、バーベキューをしている。

わたしは、川を眺めていた。

川の中に、夕日が生まれた。
キラキラとした光が輝いていた。

わたしは、川を眺めていた。

夕日は、どこかに遊びに行って、まあるい月が笑っている。
虫の合唱を聞きながら、彼女は笑っていた。

さあ、家に帰ろう。



あさひ

朝日を浴びた。

窓から外を見る。
今日は、晴れだ。
庭にできた柿が、輝いている。
黄金の木の実がそこにあった。

朝日を浴びた。

窓から外を見る。
今日は、霧が出ている。
前の川から、立ちこめるもくもく。
光と霧が反射して、幻想郷をつくりだす。

朝日が出ていなかった。

窓から外を見る。
今日は、雨だ。
窓ガラスを、風雨がぱちぱち叩く。
天然のビートをきざむドラムをわたしは見ていた。

朝日を浴びた。

窓から外を見る。
今日は晴れだ。
外は、白化粧で輝いている。
また、冬が来た。

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【詩】たんぼ/そらが暗くなって/紅葉の道

たんぼ

【本文】
たんぼは、いのちの証明書


雑草みたいな稲をぼくたちは植える

稲がどんどん大きくなる

豊かな黄金色のコメができる

そしてなにもかもいなくなる

そして、新しいいのちをつなげる。

たんぼは、いのちの証明書
たんぼにはいろんないのちが生きている
ぴょんぴょん、あめんぼ
げろげろ、カエル
ぴかぴか、蛍
ちゅんちゅん、スズメ
みんなみんな生きている
みんなが生きた証で、たんぼは豊かになっていく。

たんぼは、いのちの証明書
そして、わたしは生きていく。



そらが暗くなって

【本文】
「そらが暗くなって」

そらが暗くなった。

街灯もないこの道をわたしは歩いている。
ビルも、コンビニもないこの道を……

空が暗くなった。

光もないこの道をわたしは知っている
秋風が、少しずつ冷たくなっていく。

天《そら》が暗くなった

風が何度も吹きぬける
秋の夜は、風は自由だ
さえぎるものなどなにもない。

そらが明るくなった。

冷たさとは別のぬくもりがわたしを包んだ。

わたしは、風のようになりたい。
強く自由な風になりたい。



「紅葉の道」

【本文】

わたしは、紅葉の道をすすむ。

少しずつ寒くなってきた。
みんな、厚着をしている。
上を見上げた。
夕焼けのキャンバスには、紅のカーテンが広がっていた。

わたしは、紅葉の道をすすむ。

かなり寒くなってきた。
もうみんなコートを着ている。
地面を見つめた。
地面には、紅のじゅうたんが広がっていた。

そして、冬になる。

わたしは回りを見回した。
そこには、白いお化粧をしたセカイが広がっていた。

わたしは、紅葉のみちをすすんでいく。

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【詩】ダンボールのなかのきぼう/青い空

ダンボールのなかのきぼう/青い空

【本文】
「ダンボールのなかのきぼう」

 いったいなにが入っているのでしょうか?
 あのダンボールには……

 おかし?
 おもちゃ?
 ようふく?

 開かなくてはわかりません。
 だから、わたしにもわかりません。

 でも、ひとつだけわかります。

 段ボールの中には希望がつまっているんです。
 おかしでも、おもちゃでも、ようふくでも……。

 それは、まるでわたしの未来のように……。

「青い空」
 昨日も空は青かった。
 わたしが空を見上げたとき……

 今日も空は青かった。
 わたしが空を泣きながら見上げたとき……

 明日も空は青いんだろうな、
 わたしのあしもとは赤く染まっているのに……。

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【詩】難問

「難問」

難しいことを考えるのは、偉いことだ。

みんなそう思ってる。

学者さん、政治家さん、弁護士さん、お医者さん……。

偉い人は、みんな難しいことを考えている。

どうして、みんなは難しいことを考えるのだろうか?

それは、偉いからだ。
偉いから、難しいことを考えなくてはいけなくなるのだ。

じゃあ、この世界はすごいのだろうか?
たくさんの偉い人が作ったこのせかいは……。

せかいはドンドン難しくなる。
それは本当に偉いせかいを作っているのだろうか?

※小説家になろうにも投稿しています。

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【詩】おとなって

「おとなって」

おとなって、意外とすごくない。

小さい頃は、おとなってすごかった。
すごいものだと思ってた。
でも、それは幻想。

おとなって、意外とすごくない。
夢から覚めたとき、もうわたしはおとなだった。

おとなって意外とすごくない。
可能性がなくなっていくのだから。
それにきがついてしまうのは、わたしがおとなだから。

おとなって意外とすごくない。
それがわかったとき、おとなはおとなになる。

おとなって意外とすごくない。
そして、その時思うのだ。

子供って意外とすごいじゃん、と。

 

※小説家になろうにも投稿しています

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