【将棋観戦記】久保利明 九段 vs. 佐藤和俊 七段~振り飛車の裏芸”向かい飛車の攻防”~

注意書き

将棋連盟の将棋連盟ライブ中継アプリ等(https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )を使って観戦を楽しんでいる方向けの将棋観戦記です。

ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

・棋譜と図面を使用しない

・読者の方が上記のアプリを使用して棋譜並べをする参考になるように、序盤の構想のどこがおもしろいのかや、終盤の注目ポイントを簡潔に述べる

・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ等 のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:第33期竜王戦1組ランキング戦

対局者: 久保利明 九段 vs. 佐藤和俊 七段

日付:2020.3.30

観戦記

さあ、はじまりました。

竜王戦1組準決勝です。

振り飛車党の重鎮同士の対局になりました。

久保先生は言わずもがなの振り飛車党の頂点。

佐藤和俊先生は、朝日杯ベスト4(2回)・NHK杯準優勝・銀河戦ベスト4など隠れた実力者として、定評があります。

著書も名著揃い。

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先手の久保先生がかなり早めに端歩を突きました。

これは、相振り飛車・対抗形どちらにするか打診する意味を持っている手ですね。

端歩を受けたら対抗形・受けなかったら相振り飛車になる可能性が高いです。この序盤構想については、毎回ながらこちらの2冊がとても参考になります。

上の本では226-235頁

下の本では208-216頁をご参照ください。

将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編 (マイナビ将棋BOOKS) [ 上野裕和 ]

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現代相振り本はこの2冊が双璧だと思います。

さて、和俊先生が、居飛車を持つこととなりました。

相振りも居飛車もどちらも持つことができる振り飛車党よりのオールラウンダーですからね。

それに対して、久保先生は、今回はノーマル向かい飛車でした。

ノーマル向かい飛車。『将棋世界1月号』でも特集されていましたね。

基本的に、振り飛車党の裏芸のような戦法です。

ノーマル振り飛車なら居飛車の飛車先の歩の状況で振ることができるので、おぼえておいて損なしですよね。

振りなおす場合は、先手の三間飛車から振りなおすのが一番相性がいいです。銀が邪魔になりにくいので、三間飛車党には特におすすめ。

ノーマル振り飛車の中では、最も居飛車穴熊に強く、急戦が非常に強力。

『羽生の頭脳』文庫本2巻でも、主要変化では以下のように語られています。

(中略)穴熊をあきらめ、左美濃にして急戦に備えたほうがよさそうである。

上述、338ページ

今回も、やや形こそは違うものの、やはり左美濃になりました。羽生の頭脳が現代でも基本定跡になっているのがよくわかりますね。

じっくりとした持久戦になり、お互いの良い部分がぶつかりあう形になりました。

飛車先の歩をめぐる攻防やそこから玉頭戦に移る過程がおもしろいですね。

終始、佐藤和俊先生が優位を保っていた印象です。

それに対して、久保先生の粘りはまた必見ですね。この終盤で特にわからないところがあったので、将棋ソフト上に盤面を作って解析もかけましたが、評価値も浅い読みならば、久保先生が有利に立っている状況で、かなり難解な局面が続いていました。

ここを安定して勝ち切るのは、さすがは佐藤和俊先生!

まとめ

今回の見どころ

・振り飛車党同士の端歩をめぐる攻防

・飛車先をめぐる攻防と、玉頭戦への変化

・久保先生のねばりと、それでも勝ち切る冷静な終盤力。

【古典棋譜鑑賞会】天野宗歩の石田流~棋聖の脅威のスピード感覚~

はじめに

現代プロの棋譜は、将棋連盟のお願いによって規制されている。

ならば、著作権が完全にきれてパブリックドメインになっている古典棋譜を解説すればいいじゃない。

ラッキーなことに、私は趣味で歴史研究もしているので、古い本を読むのもまあまあ得意。さあ、レッツゴー国立国会図書館。

ということで、今回は国立国会図書館に収録されている『将棋手鑑』からの解説です。

国立国会図書館のデジタルライブラリーから、大量の古典将棋のデータをダウンロードしてきたので、現在は翻訳作業中です。

こちらのプロジェクトもその一環です。

今回は、前述の 『将棋手鑑』 11-12頁の内容の天野宗歩の香車落ちを取り上げようと思います。

天野宗歩は、振り飛車のさばきや終盤力が絶品なので、ぜひとも並べてみてください!

棋譜

解説

今回は、上手が天野宗歩です。この時、若干16歳。

下手が久田弥三郎というひとです。

天野宗歩は、石田流+美濃囲いに組みました。この時期は、美濃囲い黎明期に近いのですが、本当に現代的な駒組ですね。

それに対して、下手は、舟囲いから厚みを持った陣形で石田流のさばきを抑え込もうとしています。

38手目▲5七銀

そして、攻めのスピード感の違いが如実に出ている棋譜でもあります。

例えば、下手のこの一手。

40手目▲1六飛車

この手は香車がいない場所を狙っていますが、やや攻めが遅いです。それに対して宗歩は、中央付近の歩交換の反動をうまく利用して、高美濃を作り、将来的な左銀の攻めを実現させていく。

相手の力をうまく利用して、投げ飛ばす感じですね。振り飛車のこういうカウンターもとても勉強になります。

特に、50手台のさばきの感覚はやばいです。

↓飛車と銀桂の2枚替えで一気に優勢へと持ちこんでいますね。

56手目▲4六金

囲いの固さを考慮すれば、さばきが大成功してます。下手の飛車も正直、いい位置にいるとはお世辞でも言えないですからね。

振り飛車の左辺をうまくさばいた後は、銀を使って舟囲いの弱点である縦の攻めを断行。舟囲いのメリット広さを上から押しつぶして、逃げ場を封鎖し、攻めの形がうまく整わない下手をよそに、横からの攻撃も加えて二方面作戦でサクッと舟囲い潰しです。

93手▲6八金(終局図)

こちらが終局図。一応、一手差になっていますが内容的にはかなりの大差であるように感じました。

終局図以下の詰みの一例は

▲同 角△6九銀▲8八玉 △6八龍▲9七玉△7九角▲8六玉△8五銀▲同 玉△7四金▲7六玉 △6六龍▲同 玉△6五金打ですね。

棋譜データ

手合割:香落ち

△3四歩 ▲7六歩 △3三角 ▲2六歩 △3五歩 ▲2五歩
△3二飛 ▲4八銀 △6二玉 ▲5六歩 △4四歩 ▲6八玉
△4二銀 ▲7八玉 △4三銀 ▲4六歩 △4二角 ▲4七銀
△3四飛 ▲1六歩 △5四歩 ▲1五歩 △7二玉 ▲5八金右
△5二金左 ▲9六歩 △9四歩 ▲2六飛 △8二玉 ▲3六歩
△同 歩 ▲同 銀 △3五歩 ▲4七銀 △7二銀 ▲6八銀
△3三桂 ▲5七銀 △5三角 ▲1六飛 △6四歩 ▲3七桂
△6二角 ▲5五歩 △同 歩 ▲同 角 △6三金 ▲6六角
△5四銀 ▲3六歩 △同 歩 ▲3五歩 △3七歩成 ▲3四歩
△4七と ▲同 金 △2五桂 ▲3三歩成 △6五銀 ▲8八角
△7六銀 ▲1四歩 △5六歩 ▲6六銀 △4五歩 ▲5六金
△2七銀 ▲7七歩 △6五銀 ▲同 銀 △1六銀成 ▲4三と
△3八飛 ▲5八歩 △6五歩 ▲7九角 △5五歩 ▲5七金
△4六歩 ▲3二飛

その他、天野宗歩関係の記事はこちら

https://dnovel.net/archives/tag/%e5%a4%a9%e9%87%8e%e5%ae%97%e6%ad%a9

【将棋観戦記】里見香奈女流四冠vs西山朋佳女流三冠~頂上決戦に現れた右雁木~

注意書き

将棋連盟の将棋連盟ライブ中継アプリ等(https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )を使って観戦を楽しんでいる方向けの将棋観戦記です。

ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

・棋譜と図面を使用しない

・読者の方が上記のアプリを使用して棋譜並べをする参考になるように、序盤の構想のどこがおもしろいのかや、終盤の注目ポイントを簡潔に述べる

・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ等 のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:第70回NHK杯将棋トーナメント「出場女流棋士決定戦」

対局者: 里見香奈女流四冠vs西山朋佳女流三冠

日付:2020.3.29

観戦記

今日は楽しみにしていたNHK杯の女流棋士決定戦でした。

里見香奈女流四冠 は言わずもながの、女流棋士の頂点に長く君臨している最強の女性のひとり。タイトル数・連覇記録など常にトップレベルを走っています。元奨励会三段で、女性ではじめて三段リーグに挑戦したことでも有名な振り飛車党です。

対して、 西山朋佳女流三冠 は現役の奨励会三段。前回のリーグでは惜しくも次点になってしまいましたが、はじめての女性プロ棋士になれるかどうか期待されています。振り飛車党で、終盤の「暴れ馬」とも言われるほど豪快な将棋を指す棋風です。

やはり、相振り飛車になりましたね。

先手の西山先生は、三間飛車に振り、後手の里見先生は向かい飛車になりました。

相振り飛車の△5四歩戦法 を見せたうえで、向かい飛車に展開しております。そちらについてはこちらも参照ください。

さらに詳しく知りたい方はこちらの本の155頁をご覧ください。

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こっちだと77~88頁です 。

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先手は、三間飛車+金無双。後手は、向かい飛車+美濃囲いから、相手の攻撃力を利用し、モリモリと持ち上がって、右の雁木のような形になりました。

ここらへんの盛り上がっていく技術はさすが、里見先生です。

押さえ込まれる前に、角のさばきを断行した西山先生も金無双をうまく利用していてさすが!

後手が厚みを利用して主導権を握って、終盤へ。

しかし、さすがは暴れ馬の異名は伊達ではありませんでした。

際どい手を連発し、怪しい局面へ。

ここら辺の際どい手を指すやり方は、とても勉強になります。そして、里見先生は粘りに粘る。ふたりのいいところが全面にでていていい将棋です。

しかし、さすがの終盤力です。里見先生の粘りをものともせずに、一気に終盤力でねじ伏せる感じの剛腕でした。

まとめ

今回の見どころ

・里見先生の攻撃を利用して盛り上がっていく技術とおさえこみ

・おさえこまれないように、角をさばく間合い

・両者の終盤の剛腕ぶり。

他の観戦記はこちらです↓

https://dnovel.net/archives/tag/%E8%A6%B3%E6%88%A6

【奇襲戦法研究所】筋違い角に邪魔されない中飛車の指しかた~2手目△5二飛車~

はじめに

アマチュアの振り飛車党が、一番苦手ななんですか?

居飛車穴熊?

急戦?

いいえ、「筋違い角」でしょう。

筋違い角

振り飛車党に無理やり居飛車を強要する作戦ですね。

こちらの記事でも触れているので、興味がある方はどうぞ。

さて、昔は中飛車おじさんとして名をはせた(笑)私が、筋違い角対策の中飛車をひとつ紹介します。

それが、2手目の△5二飛車ですね。

序論

先手が▲7六歩とした時に、△5二飛車といきなり振ります。

こうして、筋違い角を事前に予防できます。

中飛車党おススメの戦法です。

何とも初心者っぽい手ですが、意外と咎めることが難しいので、何でも中飛車にしたいひとは採用してみてください!

流れ

▲7六歩△5二飛(基本図)

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は image-104.png です

先手が角道を開けてきた場合、筋違い角に誘導される恐れがあります。

そうすると中飛車にできない。それは嫌だと、初手から中飛車です。

こうすることで、筋違い角を避けて、安全に中飛車にすることができます。

あとは、ゴキゲン中飛車定跡との合流を目指します。

基本図から▲2六歩△5四歩▲2五歩△3四歩(結果図1)

ゴキゲン中飛車定跡に合流しました。

ここから先手が角交換してきたら、丸山ワクチン。

▲4八銀としてきたら、超速か一直線穴熊などの定跡と合流します。

どうして、角道を最後に開けるのか。これには、訳があるので次の章で説明します。

序盤の落とし穴

基本図から▲2六歩△3四歩(図①)

5筋の歩を突かずに、角道を開けると、一気に大乱戦に持ち込まれます。

図①から▲2二角成△同 銀(図②)

この角交換から一気に乱打戦になります。

図②から▲6五角(結果図②)

せっかく、筋違い角の乱戦を避けたのに、別の乱戦になってしまいますね。

この乱戦を避けるために、さきに5筋を突いておいた方が安全となります。

ちなみに結果図②のあとは、

△3二金▲8三角成△9二角と進んで、一応互角の戦いになるので、乱戦好きなひとはどうぞ。

先手を持った時のコツ

ということで、意外と居飛車ではこの初手5二飛車を咎めることは意外とできません。

では、どうするか?

中飛車の弱点を突く展開。それは相振り飛車です。

これについては、次回に続きます。

その他の戦法についての目次です。

【将棋観戦記】髙見泰地 七段 vs. 永瀬拓矢 二冠~土居矢倉と厚みをめぐる攻防~

注意書き

将棋連盟の将棋連盟ライブ中継アプリ(https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )を使って観戦を楽しんでいる方向けの将棋観戦記です。

ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

・棋譜と図面を使用しない

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・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント

対局者: 髙見泰地 七段 vs. 永瀬拓矢 二冠

日付:2020.3.26

観戦記

お互いに若手の矢倉の使い手同士の戦いです。

矢倉党歓喜の組み合わせですね。

高見先生といえば、「土居矢倉」。叡王獲得の原動力ともいえる新時代の矢倉筆頭候補。

今矢倉党の救世主のような扱いになっている戦法です。

昭和初期に指されていた形が、復活するのはおもしろいですよね。

将棋連盟のサイトに組み方が載っているので、知らない方はどうぞ↓

https://www.shogi.or.jp/column/2019/07/kakoi_77.html(外部リンク)

私が土居矢倉のメリットとして考えるのは

・バランスが良く、急戦矢倉が大流行中の現在、従来の矢倉よりも使いやすい

・角交換に強い

・比較的に先手が攻めを作りやすい(現在の矢倉は基本的に後手が先攻する形が多い)

・片矢倉に変化可能

これに対して、永瀬先生は棒銀で対抗しました。

相土居矢倉などをじっくり狙うと、先手が先攻できるので、後手は急戦調の将棋が流行しています。

自分が見ているところだと棒銀で対抗することが多いですね。

まだ、土居矢倉は、定跡がしっかり固まっていないようなところもありますが、序盤の組み方は結構気をつかいます。

先手と後手がお互いに急戦にしないか注意したり、先手が早囲いにする権利も持っていたりするので、しっかり確認しておいた方がいいと思います。

おすすめはこちらの書籍の10~23頁です。

▲6七金左型矢倉 徹底ガイド [ 所司和晴 ]

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永瀬先生は棒銀からの端攻めを狙う一方、高見先生は雀刺しの形を作り対抗します。

永瀬先生の代名詞は受けですが、厚みを受けに転換するのがとてもうまいと思います。

今回の対局は4筋の位をめぐる攻防が激しいです。中盤のここが天王山で、ここを確保した永瀬先生が攻撃をうまくつなげることができたというのが私の見立てです。

厚みをめぐる攻防を堪能できる棋譜なので、矢倉党はぜひとも並べてみてください。

まとめ

今回の見どころ

・土居矢倉をめぐる攻防

・厚みをめぐる攻防と確保後の厚みの使い方

【将棋観戦記】渡辺明王将vs広瀬章人八段~右四間飛車の対処法と勝ちやすい形の作り方~

注意書き

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・棋譜と図面を使用しない

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・あくまで、 将棋連盟ライブ中継アプリ のバックナンバーで参考になる対局紹介というレベルで抑える。

今回の対局の基本情報

棋戦名:第69期王将戦

対局者: 渡辺明王将vs広瀬章人八段

日付:2020.3.26

観戦記

すごかったですね、王将戦。

ギリギリの戦いを制して、渡辺王将がタイトル防衛です。

今回の第7局は、矢倉vs右四間飛車の形になりました。

矢倉には、5手目論争があります。

▲6六歩

▲7七銀

▲7七銀 (昭和期)→ ▲6六歩 (平成)→ ▲7七銀 (平成末~令和)と大まかに言えば、流行がこんな感じに変わっていました。

▲6六歩 のほうが、急戦に対して対処しやすく、攻撃力ある4六銀3七桂などに組めるため、主流になっていたんですが、左美濃急戦と4五歩反発の新手がソフトによって生み出されると、 ▲6六歩 が壊滅。一気に昭和期の ▲7七銀 に戻った流れがあります。

ただし、 ▲7七銀に有効になる急戦が多く、現在では、矢倉は相矢倉のようにがっちり囲う展開が激減し、急戦を中心に回っている状況になっています。

後手の広瀬先生は、右四間飛車を採用しました。

右四間飛車は、アマの矢倉党を悩ませる戦法ですよね。

▲6六歩 定跡の本なんですが、私が読んだ中で一番わかりやすいので紹介。

対急戦矢倉必勝ガイド (マイコミ将棋books) [ 金井恒太 ]

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感想(2件)

こちらの本の6~7頁だけでも読んでおくと、右四間飛車への対処法がよくわかります。

今回の対局でも ▲7七の地点にいるはずの銀が一度、引いて、角がいつもよりも前に出ているのは、対右四間飛車を強く意識しているのです。

右四間飛車の攻撃が始まるのをどう押さえ込むか、そしてどう主導権を握るか。渡辺王将の工夫と苦悩がよくわかる棋譜になっていますねw

中盤の流れは、ちょっとアマにはまねしにくい形ですが、今回の注目点は終盤です。

ただ、2・3筋の厚みから攻撃を作り出していくのはとても勉強になりました。厚みってアマではあまり重要視されませんが、やっぱり攻撃を繋げやすくなりますからね。

渡辺先生が、じっくりとしかし着実に勝ちやすい手を連発しているのです。

早く勝ちにいかずに、じっくりと寄せやすい形に誘導し、敵陣を切り崩していく実戦的な勝ち方を堪能してください。

まとめ

今回の見どころ

・右四間飛車をめぐる序盤の攻防

・厚みを活かした攻撃

・終盤の陣形の切り崩しかた

プロ棋士やアマ強豪が実践していた勉強法を紹介

プロ棋士やアマ強豪が実践していた勉強法を紹介

はじめに

今回はプロ棋士やアマ強豪たちが実際にやっているもしくはやっていた勉強法をいくつかの書籍から引用して紹介したいと思います。

三浦弘行九段

修業時代はネット将棋などもなかった時代。地方に住んでいた三浦先生は、実戦は奨励会の例会の時だけというのが長く続いていたそうです。

そこで、取り組んだのが江戸時代の詰将棋の最高峰の問題集『将棋図巧』。それに1年間かけて取り組んで、読みの技術を磨いたそうです。

序盤の研究家のイメージが強い三浦先生ですが、やはり長くA級に君臨する怪物です。基本的な読みを最も大事にしていたから今の長い活躍があるのだと思います。

中学3年のとき、奨励会に入ってからです。(省略)そこで『将棋図巧』を始めたんです。それ以前から『詰将棋パラダイス』を購読していたのですが、そう考えてから長手数の難解作を、真剣に考えるようにしました

将棋世界1992年12月号 より

佐藤天彦九段

将棋世界の対談で、昭和期の棋譜をたくさん並べていると言っていました。将棋世界の特集号で、師匠の師匠である大山康晴十五世名人の全集を並べていると語っていて、詳しい解説まで書いていたので相当精通していると思われます。

渡辺明三冠

棋譜並べ中心の勉強だと、よく将棋世界やNHK将棋講座で話しています。

・谷川浩司全集
・中原誠名局集

などを勉強したと語っていてやはり棋譜並べが勉強の中心になっているものだと思われます。逆に、あまり詰将棋は好きではないそうです。

渡辺明竜王は小学生の頃から『谷川浩司全集』を片手に棋譜を並べ、谷川九段の「一直線に勝つ技術」を学んだという。

『NHK将棋講座』2013年7月号より

千田 翔太 七段

将棋ソフトを使って勉強をしていることは有名ですが、実はソフト中心になる前は、永世名人の棋譜を全て並べていたことを『不屈の棋士』という本で語っていました。

不屈の棋士 (講談社現代新書) [ 大川 慎太郎 ]

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木村名人から羽生名人までのすべての棋譜を並べた後に、将棋ソフト中心の勉強法に切り替えたそうなので、やはり基礎力はすごいのだと思います

永瀬拓矢二冠

鬼軍曹と呼ばれて、すさまじい勉強量を維持していることで有名な永瀬先生ですが、マイナビのインタビューによると実戦と棋譜並べを中心に勉強していたと語っています。

また、この本では実際の練習対局量(修行時代は1日30局)や中手数の詰将棋(20~30手くらい)も解いていることを明かしています。

永瀬流負けない将棋 (マイナビ将棋BOOKS) [ 永瀬拓矢 ]

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実戦が中心になっているようですが、vsからいろんな研究を吸収しているんですね。。

小池重明元アマ名人

破天荒な行動で知られたアマチュア強豪中の強豪ですね。別名は新宿の殺し屋。

彼の勉強法の中心は、「必死」問題でした。以下、引用。

たえず自分より少し強い人と指すこと(二級差位)相手の知識を吸収する。知らないうちに強くなっている。番数を指すこと。頭で覚えるより体で。一つの得意戦法をもつこと。必至問題をたくさん解くこと。

近代将棋1982年6月号 より

詰将棋は難しかったから、実戦的に見える必至問題を中心に添えたということらしいです。そういう考えはおもしろいですね。

小池重明の殺し屋のような終盤逆転力は必死問題がルーツだと思うとやる気があがります。

【将棋観戦記】豊島将之 竜王・名人 vs. 鈴木大介 九段~アマ必見の四間飛車鈴木システム~

注意書き

将棋連盟の将棋連盟ライブ中継アプリ(https://www.shogi.or.jp/lp/mr201704/ )を使って観戦を楽しんでいる方向けの将棋観戦記です。

ただし、将棋連盟から「棋譜利用に関するお願い」(https://www.shogi.or.jp/news/2019/09/post_1824.html )という通達も出ているのでこれを遵守して、観戦記を書いていこうと思います。

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今回の対局の基本情報

棋戦名:第61期王位戦挑戦者決定リーグ紅組

対局者: 豊島将之 竜王・名人 vs. 鈴木大介 九段

日付:2020.3.23

観戦記

ついに注目の一戦です。

四間飛車で好調の鈴木先生vs棋界の頂点豊島竜王・名人の激突です。

これはアマチュアに本当に参考になる棋譜なので、紹介させていただきます。

豊島名人の居飛車穴熊に対して、鈴木先生は四間飛車の△4四銀型でいどむ一局ですね。

四間飛車のオーソドックスな居飛車穴熊対策としては、 △4四銀型 と△5四銀型があります。

△5四銀型 はバランス重視で玉頭戦にも含みを持たせた形。

今回の △4四銀型 は四間飛車の攻撃力が高く、積極的に主導権を握りに行く形ですね。欠点としては、さばきあいになりやすく、そうなった場合は固さの暴力で居飛車穴熊が勝ちやすくなってしまうこと。

端歩の有無・穴熊の金の位置などで定跡が結構違うので、詳しく知りたい方はこちらの本の195~256頁をお勧めします。

「次の一手」で覚える 四間飛車定跡コレクション404 (マイナビ将棋文庫) [ 所司和晴 ]

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定跡通りになってしまうと、居飛車穴熊が有利になるので、鈴木先生は工夫し、△7一玉にして、展開を一手早めて打開しようとしていますね。

定義がイマイチ定まっていませんが、 △4四銀型 でできる限り早く速攻をかける広義の鈴木システムの変化ですね。

藤井システムよりもマイナーですが、この形はアマにとっては相対的に指しやすく、まずはこちらから始めるのが私のおススメです。

鈴木システムにはいくつか指し方があるのですが、今回は端攻めへの変化です。豊島名人が端歩を受ける穴熊を採用してきたこともあって、そちらを目指したものだと思われます。

中盤までのこの端攻めは本当に凄かった。

この流れは、是非ともお手本にして欲しい四間飛車です。

完全に主導権を握っていて、一時的に豊島名人からリードを奪っていたんですが、穴熊の固さを活かした指しまわしで、逆転されて、端攻めの反動もあり一気に勝負が決まってしまいました( ;∀;)

しかし、序中盤までの流れは、振り飛車党は必見です。

まとめ

今回の見どころ

・鈴木システム( △4四銀型 )の攻め方

・端攻めの手順

・端攻めの反動を活かした、豊島名人の穴熊感覚

こちらのブログの四間飛車人気記事はこちらですw

将棋アプリ「将皇」徹底研究

はじめに

久しぶりに、将棋アプリ将皇と対局してみました。
将棋を始めたころに、よく使っていたアプリで懐かしいなと思い対局。

当時は、まだ級位者だったのでレベル1に勝ったり負けたりしていた記憶があります。

yahoo知恵袋で、レベル5がアマ初段位だという知識を経て対局。

みごとに負け越しましたww

あれ強くない?
ちなみに、私の棋力は以下の感じ↓

将棋ウォーズ三段
ぴよ将棋のレート 三段
道場 三段

ここから導き出される真実は、将皇レベル5は普通の道場三段(自分)よりも強い。

将皇の棋風

基本的に居飛車党で、終盤の粘り方が異常に強い印象で、はっきり言えばぴよ将棋の三段よりも強力な受け将棋。

序盤はぴよよりもうまく、ぴよは終盤を攻めて逆転してくるイメージですが、こちらは受けて粘って逆転を目指す棋風です。

将皇のレベルは?

将皇レベル5はそうなると、自分と同格もしくはそれよりもやや強いような気がする。

そこでネットの海をめぐりにめぐって、開発者様のブログにたどり着きました。

将皇は、将棋倶楽部24に参加していたことがあるので、その時のレートが書かれていました。

それがこんな感じです。

以下、引用させていただきます。

LV0:214(14級)

LV1:451(11級)

LV2:記録なし

LV3:899(7級)

LV4:記録なし

LV5:1701(2段) ※R200差のみ対戦受付

LV6:1934(3段)※R200差のみ対戦受付

コンピュータ将棋「将皇」の開発日記 様より

レベル5は、将棋倶楽部24の二段じゃないか( ゚Д゚)知恵袋の嘘つき(笑)

よく知らない方のためにいっておくと24の段位は、アマチュア段位の中で最高峰の難易度を誇ります。

どれくらい難しいのかというと、将棋ウォーズ1級が、向こうではだいたい10級とかのレベルです(;’∀’)

アマ三段が、だいたい24初段位だと言われているので、24の二段=アマ四段くらいですw

つまり、めっちゃ強い(笑)
ぴよ将棋の最強レベルが、アマ五段と言われているので、ほぼ匹敵するレベルですね。

これはガチで勝負しなくてはいけない。

ということで、現在自分の中で最も定跡研究が進んでいる三間飛車で対抗していますw

これでも終盤力の差があるので、かなり大苦戦しますが……

【棋譜添削】四間飛車vsエルモ囲い

はじめに

今回は久しぶりに、級位者のかたの棋譜添削をしていこうと思います!

ほかの人の棋譜をしっかり読み込むと色んな発見があったりして、とても勉強になります。

今回は、後手のかたから、お話があったので、後手視点で書いていきます!

棋譜

添削

1~31手

序盤の流れは完璧ですね。私の時代よりも、級位者のかたの序盤の知識は本当にしっかりしていて、頭が下がります。

駒組と仕掛けの流れまではほぼほぼ完璧です!すごい!!

あとは、△5一金として、囲いを完成させるかどうかが問題ですね。

ここら辺は好みの問題ですが、完成させたほうが、安心はできると思います。

ただ、完成させずに、もとの位置に置いておくと、陣形のバランスがよくなるので、一長一短です。

32手目

このしかけの流れが少し悪かったです。

今回はとがめられなかったので大丈夫ですが、ぶつかった歩を放置して、飛車を袖飛車にしてしまうと、図のように角をさばかれて、飛車のこびん(青ペンの位置)に打ち込まれて一気に劣勢になります。

だから、この局面では、歩をとってから、袖飛車にする順番を覚えておいたほうがいいと思います。

38手目付近

角の成りこみをして、ここで攻め合いになりました!!しかけのタイミングで手順前後はありましたが、基本的な流れはいいですね。

ここからはスピード勝負です。ただ、エルモは船囲いよりも固いんですが、さすがに美濃ほど固くはありません。居飛車を持つ場合は、覚悟を固めてスピード勝負に勝つことを意識していくと良いと思います!

ここのスピード勝負の感覚を身につけることができればより勝てるようになるはずです。

敗着の一手(42手目)

この後の一手(△7三金)が敗着の一手となってしまいました。

ここでうまく飛車閉じ込めれば、逆に優勢で攻撃がうまくいったはずです。

正解は、△7一歩(青ペン)です。

「底歩」と呼ばれる手筋ですね。これで金取りを防いで、相手の飛車を狭い場所に閉じ込めることができます。

「金底の歩、岩より固し」という格言通りの展開です。

逆転を狙えたチャンスの局面(61手目)

ここが逆転を狙えたチャンスだったと思います。とても素晴らしい流れで美濃を崩せていたので、惜しい局面でした。

ここで攻めが重すぎて、スピードがダウンして、速度負けしてしまった印象ですね。

△6七金と打つと、せっかく好位置にいる銀の攻めを邪魔してしまいます。

なので、銀が直接成りこんだ方が、軽快な攻めになったはずです。

金を打ちこんでしまったがために、敵の攻めを防ぐ駒も失い、スピード勝負で後れを取ってしまった。それが直接的な敗因です。

金を温存し、逆転のチャンスを狙うために速度が早い攻撃の形を目指すべきだったのではないかと思います。

攻めの形を作って圧迫した後は、△4一金で限界まで粘るのがイイのかなと思います。

まとめ

・序盤の駒組は完璧です。

・仕掛けの手順に注意してください。

・底歩ができれば、飛車を閉じ込めて、一方的に攻め続けることができる状態でした。

・中盤の美濃崩しの攻めは、とてもよかったです。

・攻めが重いがために、守備のかなめの金を使ってしまい逆転のチャンスを拾えなかったのが惜しかったです。

こんな感じだと思います。

少しでも参考になれば幸いです。