ということで、今回はみんな大好き加藤一二三九段の鬼手を3つほど紹介します。自分は昭和の名局を並べるのが好きなんですが、特に木村義雄・大山康晴・花村元司・加藤一二三(敬称略)の4人の棋譜ならべが特に好きです。
特に加藤一二三九段の勝ち局は、本当に名局が多いと思います。
ただ、今の将棋ファンからすると、加藤先生の全盛期は生まれてなかったという人も多いでしょう。なので、今回は独断と偏見で選んだ加藤流の超絶手を3つほど紹介していきます!
加藤先生といえば、棒銀。と考える人も多いとは思いますが、私的にはツノ銀中飛車に対する加藤流袖飛車、矢倉戦法のほうが好きなので、選考基準に影響を与えています(笑)
目次
1.1979-02-07 王将戦 加藤一二三 vs. 中原誠 【外部リンク】
相矢倉のプロフェッショナル同士の対局ですが、本局は中原誠王将(当時)が裏芸の中飛車を採用しました。
対する加藤棋王は、伝家の宝刀袖飛車で対抗します。
問題の鬼手は、37手目でした。
この局面。加藤先生の次の一手は?
ちなみに、この手は定跡化されました! ノーマル中飛車党の方々は知っているかもしれませんね。
正解は、▲5五歩!
中飛車にあえて、5筋を攻める鬼手ですね!
△同 歩▲4五歩△同 歩▲同 桂△2二角▲4六銀△4四歩▲3三歩△同 桂▲同桂成
一気に攻撃が繋がりました。
ぶ厚いノーマル中飛車の陣形を一撃で崩す驚異の一手ですね。
攻撃が繋がりやすいのでかなりおもしろい一手です。コンピュータはまだ互角だと判断していますが、人間的にはとても勝ちやすい局面だと思います。
この対局に勝って、加藤一二三はタイトルを獲得しました。この常識外の一手を「思い付き」で指したらしいので、「神武以来の天才」の異名は伊達じゃない。
2.1989-11-02 王位戦 加藤一二三 vs. 羽生善治【外部リンクへ】
今度は羽生善治戦です。
これは、『羽生の頭脳』にも掲載された名局ですね。
羽生が中飛車に振ったのに対して、加藤一二三は、伝家の宝刀の袖飛車で対抗する。
天才同士の激突に対して、この終盤のひふみんは、凄まじい絶妙手を放って大逆転をします。
羽生マジックを上回る一手。なんだかわかりますか?
正解は、
▲6三角です。
これが絶体絶命の自玉を救い出す「詰めろ逃れの詰めろ」になっているんですね。
△8八銀と後手が迫っても、▲8六玉△8四飛▲8五銀と逃げられます。
後手が緩手でも指そうものなら、▲8一角成 △9三玉 ▲8五桂 △8四玉 ▲7五金 で即詰。
うん、加藤マジック炸裂ですw
3.1982-07-30 名人戦 加藤一二三 vs. 中原誠【外部リンクへ】
ということで、最後はやはり、伝説の名人戦10番勝負ですね。まさかの、日付が7月30日ということで、激闘の様子がわかりますね。
両天才の才能が激突したシリーズです。
引き分けが1回、千日手が2回も発生して、3勝3敗の五分の最終局。神様はなんという舞台を作ったのだろうか。
お互いに死力を尽くした戦争は、この97手目の同角成で勝敗が決しました。
いくつかの将棋ソフトに検討させて、対局通り同金で互角と判断していたのですが、これが即詰につながる変化となります。同金の後の次の一手は……
正解は、▲3二銀成
あとは、下の流れるような手順です。
△同 玉 ▲3一銀 △同 玉 ▲3二金 △同 玉▲5二飛成 △4二金 ▲4三金 △2二玉 ▲4二龍 △3二銀 ▲同 金 △1二玉 ▲2二金
この劇的な結末。そして、加藤一二三は初挑戦から22年目にして、ついに名人位を奪取したのでした。この瞬間、十段【竜王戦の前身】と合わせて、2冠となったひふみんは棋界の頂点に君臨したのでした。
まとめ
ということで、今回は加藤一二三九段の絶妙手特集でした。
みなさん、お楽しみいただけたらならば幸いです。
ひふみんは、バラエティーで大人気で、解説もおもしろいお爺ちゃんという印象のひとも多いとは思いますが、本当に名局も多い偉大な棋士です。
是非とも棋譜ならべ等でその実力を体感してみてください。
『加藤一二三名局集』もとてもおすすめです。
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