不幸な男(ヒューマンドラマ)
【本文】
おれは、不幸だ。
世界一不幸だ。
今日も本当についてなかった。
朝は7時におきた。おきたくなかった。本当はずっと寝ていたかったのにだ。
でも、おきてしまった。
太陽がカンカンとまぶしい。こんなんでは二度寝もできない。なんと不幸だろう。
朝食は目玉焼きとトーストとサラダ。
半熟たまごとベーコンのうまみ。
バターがとろけたトースト。
さっぱりした生野菜にクリーミーなドレッシング。
だが、おれは和食が食べたかったのだ。味噌汁と魚の気分だった。
こんなことを妻に言ったら確実にけんかになる。
「うん、うまい」
こんなつまらないウソをつかなければいけない自分が悲しい。
でも、おいしかった。
会社に向かうために満員電車にのる。息苦しい。
こんなのって絶対におかしい。
痴漢に間違われたら一発で人生という名のゲームが終わってしまう。
人権侵害もいいところである。
会社についたらつまらない事務仕事が延々と待っている。今日は外出の予定もない。
なんて日だ。
10時のコーヒータイムしか楽しみがない。
こうなったら隠しているチョコレートも食べてやる。
昼休みになった。
延々と続くつまらない事務仕事もいったん休憩。
今日の昼飯は妻が作ってくれた弁当。
魚の照り焼きとたまご焼き。袋の中にカップみそ汁も入っていた。
これが朝食だったらよかったのに。肉厚の魚をむさぼりながらそう考えた。
昼休み明け大きなトラブルが発生した。
取引先に発注した商品がまだ届かないのだ。
昨日の午前中までが期限だったのに。
「おまえのチェックが甘いからだ」
と部長は大目玉。どうも新人が間違えたらしい。あのバカ佐藤め。
得意先に出向き、無理いって、手配してくれることになった。
こんな外出はいやだ。あとで佐藤に嫌味をいってやる。でも、無事に終わってよかった。
そんなトラブルのせいで定時を一時間過ぎての帰宅。コンビニでビールとつまみを買って帰る。
日は完全に暮れていた。まっくらな空にむかってため息とともにこうつぶやく。
「ああ、今日も不幸だったな」
と。
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