『どんぐり姉妹』書評

前回の書評はこちら

『どんぐり姉妹』
姉の名はどん子、妹の名はぐり子。突然の事故で奪われた、大好きだった両親の笑顔。気むずかしいおじいさんの世話をしながら、学んだ大切なこと。苦しい時間を姉妹は手をとりあって、生きてきた。とめどなく広がる人生で、自分を見失わないように。気持ちが少し楽になる居場所、それが「どんぐり姉妹」。「私たちはサイトの中にしか、存在しない姉妹です。私たちにいつでもメールをください。時間はかかっても、お返事をします。」―メールは祈りをのせて。ネットが癒やす物語。

「BOOK」データベースより


よしもとばななの小説は好きです。ある意味では、パターン化されているのだけど、それが心の栄養として隅々までいきわたる気がする。

大事な人を失った主人公が再生していく物語。これがよしもとばななの基本だ。

その世界は本当なら冷たさに満ちているはずなのに、登場人物たちは温かく読者の心を癒してくれる。

今回は幼少期に両親を失った姉妹の物語。
彼女たちは、ネット上でどんぐり姉妹と名乗り、悩み相談を受け付けている。

両親との別れ・田舎生活・豪華な生活・お爺さんとの介護のはなし。

ふたりは、親戚の家を転々としながら、いるべき場所を見つけていく。

妹の初恋の人との霊的な体験・姉の恋愛観。
彼女たちの動きは日常的でありながらも、非日常に分類される。しかしながら、読み手は非日常を日常的に体験していく。

本当にうまいですね。
そして、この世界観がどうしようもないくらい優しい。だからこそ、私はよしもとばななの小説が好きなんです。

国内の作家はあまり読まないんですが、よしもとばなな・重松清は例外で結構読みます。二人の共通点は人間臭さのなかから生まれてくる優しさ。

何かを失ったことがある人だけが持つ温かみを表現するのがうまい作家さんですよね。

どんぐり姉妹でいえば、二人は一心同体なんだけど、やはりどこか欠けている。それは幼少期に親を失った影響のはずだけど、ふたりはそれを埋めようとしないで受け入れている。

小説であれば、本来は受容ではなく、克服が題材となることが多いはずなんですが、よしもとばななは受け入れることからはじめていく。それに読者は共感できるのだと思います。

フィクションでありながら、フィクションではない世界観とで言うのでしょうか。

彼女の作品はなにか悩んだときや傷ついたときに読むべき本です。

結局のところ人につけられた傷は、人との関係の上でしか治せないのではないか。

彼女の小説を読むといつもそう思います。

今回も傑作でした。

どんぐり姉妹 (新潮文庫 新潮文庫) [ よしもと ばなな ]

価格:693円
(2020/2/12 21:38時点)
感想(0件)

投稿者:

D

小説家になろうで、小説を書いています。 得意ジャンルは、ラブコメ、SF、歴史もの。 このサイトでは、オリジナル小説・詩・ゲームの紹介や読んだ本の書評をしていきたいと考えています!

「『どんぐり姉妹』書評」への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です