【自作小説】海を求めた男/ば・く・だ・ん/詐欺師

海を求めた男(ヒューマンドラマ)

【本文】
 わたしは海をみたかった。
 我が故郷は山国である。

 あたり一面の緑と雪化粧。それはとても美しかった。
 わたしは故郷を愛している。

 だが、わたしは海を知ってしまった。
 青々とした美しいさと塩辛い水。ぜひともこれを見てみたい。

 家族は必死でわたしを引き留めた。それでもわたしはあきらめなかった。

 ある夏、ついにわたしは計画を実行した。わずかばかりの食料と水をもっての逃避行だ。
 海というものは東にあるらしい。わたしは東の方向にひたすら歩いた。

 1日、3日、1週間歩いた。
 しかし、山は続いていた。海はいっこうにみえてこない。

 途中、山賊に襲われ、わたしは命からがら逃げた。逃げた。逃げた。
 食料もほとんど無くなり、道中の親切な旅行者に塩漬け肉をわけてもらった。

 そして、わたしは今、山の頂上にいる。
 いったいいくつめの頂上かわからない。

 塩漬け肉をほおばり、水でながしこむ。
 しょっぱい肉と水が体にしみこんでいく。
 生きかえる。
 空を見上げた。雲ひとつない青空だった。

「海はこんなにそばにあったのか」
 わたしは清々しい気分でつぶやいた。



ば・く・だ・ん(ヒューマンドラマ)

【本文】
「火遊びはいけないよ」
 親はいつもぼくにこう言っていた。

 大人は本当に勝手だ。
 こどもに禁止しているのに、自分はライターやガスなど自由に使っている。

 ぼくだって火を使ってみたい。
 ぼくが口答えするといつもこう言う

「大人はいいの。火の使い方わかってるんだから」
 ある日、近所の家が火事になった。天ぷらの油の不始末らしい。
 家はとてもよく燃えていた。
 まるで、爆弾が爆発したみたいだ。

「大人だってちゃんと火をつかえてないじゃん」
 こころのなかでぼくはそうつぶやいた。

 そして、決心したのだ。
 ちゃんと火を使える大人になろうと。



詐欺師(ホラー、新作)

【本文】
 僕は人がいい。
 そんな風によく言われる。

 僕の短い人生の中で、何度も裏切られてきた。

 いじめの黒幕が親友だったり、恋人は僕のほかにも恋人がいた。
 彼らは、僕のお金が目的だった。

 だまされるたびに、周囲の人は僕に言うのだ。
「あなたは、優しすぎる」

 でも、それは間違っている。
 僕は、だまされているのではないのだ。
 僕は、彼らをだましているのである。

 すべては、僕の欲求のため……

 彼らが本性を明かしたとき、僕は高揚感に包まれる。
「ああ、これでまたひとり、僕は人を裏切ることができる」

 僕の服は、赤く染まっている。

※小説家になろうにも投稿しています。

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