【書評】『人はなんで生きるのか 他四編』/『人生論』

人はなんで生きるのか』

(あらすじ)
 とある貧しい靴屋が、ある日不思議な男と出会う。「神様から罰せられた」という男の身を引き取った靴屋。何年も共同生活送るうちに、男はとあることに気がつき奇跡が発生する。表題の他四編を収録したトルストイの民話集。

(感想)
 さて、今日はトルストイ作、中村白葉訳『人はなんで生きるのか 他四編』(岩波文庫)です。トルストイの短編は、彼の主張が強く出ているので読んでいて面白いです。特に表題「人はなんで生きるのか」は面白い。

 結局のところ、「人はなんで生きるのか」という問いに対する回答「人は愛によって生きる」というのがトルストイの考え方を端的に表現しているのだと思います。「他者を愛する」行為の連鎖が、最終的には神という存在にたどり着く。この思考はトルストイ流の「神の存在証明」なのかもしれません。

 トルストイ作の物語において、この愛の連鎖に気が付く時、光が見える描写に出会えます。『光あるうち光の中を歩め』や『戦争と平和』、そしてある意味気が付いた『アンナ・カレーニナ』などなど。この最後の光を見るために自分はトルストイの作品を読んでいます。この光は、つまりトルストイの言うところの「神さま」だと思います。

 すべての苦悩を超えた先に見えるあの光。すべてが救われた気持ちになります。

 「……愛によって生きているものは、神さまの中に生きているもので、つまり神さまは、そのひとの中にいらっしゃるのです。なぜなら、神さまは愛なのですから」(53頁)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『人生論』

心を摩耗させる社会への挑戦

 さて、今日はトルストイ『人生論』(角川文庫)の書評です。トルストイは私が一番好きな作家の一人で、この作品は物語ではなく、トルストイ本人の思想について書かれています。なので、彼の大作を読む前に読んでおくと作品についての理解が深まるはず。

 彼の思想の根幹にあるものは個人的に以下の3つだと思います。

  ①知識偏重の生き方を否定し、理性に従った生き方を目指す。
  ②自分の持つエゴから離れて、愛というものを中心にして生きていく。
  ③魂の不死を信じることで、死への恐怖を克服する。

 ある意味では原始回帰といえる考え方かもしれません。科学技術の発展により、神をも殺してしまう世界を否定し、夏目漱石の言う「則天去私」のような生き方を追求する。科学の発展という禁断の果実により、自分たちの心や信仰を殺しながら生きている人たちのアンチテーゼですね。

 そして、ある意味では圧倒的なまでもの「楽天主義」にたつ③。人と人とが触れあうことで、互いの魂を交換しそれを保存する。保存した魂が別人と触れ合うことで、他者に自分の魂が動いていきそれが永遠と続いていく。さらに、もう一つ。昨日と今日では自分は別人である。寝ている時に生まれ変わっているようなもので、死というものはその延長に過ぎない。こういう世界で死を恐れる必要があるのか?。すごい発想です。

 これを読んだとき、とても明るい気分になったことを覚えています。トルストイの思想は西洋と東洋の良いところを組み合わせているように思うのでとても魅力的です。

 人生の羅針盤として非常に面白い一冊なのでぜひお読みください!


ブログ村のランキングに参加中です。
おもしろかったらクリックしていただくととても嬉しいです。

にほんブログ村 にほんブログ村へ


にほんブログ村

2 Replies to “【書評】『人はなんで生きるのか 他四編』/『人生論』”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です