【詩】坂/かんぱい/コーヒー/生きる/時よ、止まれ

「坂」


坂を歩く
湿気をまとった空気は、少しずつわたしのからだを包んでいく
なつのひざしは、わたしのからだを貫いていく
この行為にいったいなんの意味があるのか
考えてもわからない
ただ、歩く

坂を歩いた
藪の中にあるその場所は、夏であるにもかかわらず冷たい雰囲気をまとっている
無機物の石が集結しているからだろうか
この場所に意味はあっても、意味はない
わたしは彼のもとにいく

彼のもとにつく
そこには、灰となった彼が鎮座している
こことは違う冷たい冷たい墓のなかで
彼にとってはこの場所は意味がないのかもしれない
魂の不死が本当かどうかはわからない
確実に言えることは、ここは生者のための場所だ

向こう側にいる彼はいったいどこにいるのだろう


「かんぱい」

かんぱい
かんぱい
ふたりはビールを飲みほした
枝豆を食べる
仕事の愚痴がはじまる
いい大人になってしまった

かんぱい
かんぱい
おれたちはビールをのみほした
枝豆を食べる
昔話に花をさかせる
いい大人になってしまった

かんぱい
かんぱい
ぼくたちはビールをのみほした
枝まめをたべる
すきだったおんなの子のことを話す
ばかな子供にもどってしまった

「コーヒー」

コーヒーを飲む
苦いコーヒーを飲む
いつからだろう
これを飲めるようになったのは
時の螺旋階段のどのタイミングだったかはわからない
ただ、苦みによって自分を罰したかっただけなのかもしれない
思春期の悩みなんてそんなものだ

オフィスでそんなバカなことを考えて、また、俺は自分を罰した

「生きる」

みんなは生きることを真剣に考えすぎる
そんなに満たされる必要なんてないのに
虚構の世界にみんなは騙されているんだ

すこしの仕事をして、たまに、誰かから褒められる
たまに、おもしろい本やドラマを味わって、感動する
同じ趣味の人とたまに、バカな話をする
たまに、家族と公園やデパートに遊びにいく
ゲームに負けて、たまに勝つ
たまに、人を好きになる

人生なんて、そんな単純なものなのに

「時よ、止まれ」

晴れていた空が急に暗くなる
空に浮かぶ積乱雲は、水の要塞のように高くそびえたっていた
天に浮かぶそれは、地上へと弾幕のように雨を降り注ぐ

その大きな爆弾は、地上で爆発して、あたり一面を濡らしていく
とめることはできない圧倒的な力
私は、それをしずかに浴び続けた

そして、突然の爆撃は終わった
天は青くなり、雲は散り散りになってどこかへ行ってしまう
そして、私は戯曲の一節を口ずさんだ。

時よ、止まれ。汝は、いかにも美しい。

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