目次
「16時45分」
16時45分
わたしが大好きな時間だ
でも、それには条件がある
季節は冬じゃなくてはいけない
どうして冬じゃなくちゃいけないのかって?
それは
空のせいだ
冬
16時45分
わたしは、空を見あげた
空は澄んでいて、暗くなりかけている
日は完全に沈んで、あるのは月だけだ
星を見るのには、まだ明るくて
夕焼けを見るのには遅すぎる
冬
16時45分
それは、奇跡の時間だ
空には、月しかいないのだから
日中、快晴ならば、雲すらいない
ネイビーな空には、月だけ
「とてもきれいですね」
わたしは、月に語りかける
「真っ暗なあさ」
いまは、朝なのにまっくらだ
まるで、夜みたいだ
いや、夜よりも静かだ
ひとも車も、ここにはなにもない
田んぼは、まるで大地のように
川は、まるでブラックホールのように
わたしをすいよせてくる
すこしずつ、東の空がオレンジ色にかわる
時間がもどっていく
そして、新しい日常がうまれた
「夢の国からの帰り道」
夢の国にいってきた
そこは、笑顔と光にあふれている
わたしが住んでいる場所よりも、ひとが多いその場所は
輝くほどに色づいている
そして、帰り道
駅から車に乗った私はまどから外を見る
そこには静寂しかない
光はどこかに消え失せ、すれ違う車のランプだけが
唯一つの光源
蓮畑の水が、月の灯りを反射している
夢がさめた瞬間だった
そして、新しい日常が終わった
「しろいこびと」
今朝、雪が降った
わたしは、窓から庭を見ている
空から降ってきたそのしろいこびとが窓によりかかる
安心した表情になったそのこびとは、少しずつすがたを変えた
透明になってしまったこびとは、地面に向かってながれおちる
今朝、雪が降った。
庭は、白いこびとたちのものとなっていた
ここ数日は、わたしの庭はかれらのものになってしまうだろう
それでいい
それで彼らが満足できるなら
彼らは儚くきえていく
だけど、それはみんな一緒だ
彼らの数日は、わたしにとっての八十年なのだから
「自由への鐘」
そとをみた
まどからそとを見た
ミドリの木々が風でゆれて、手を振っている
わたしは、彼女に会釈した
そとをみた
まどからそとをみた
そらはオレンジ色に変わっていた
もうすぐ一日がおわる
彼は、わたしの自由を祝福してくれているのだ
鐘がなった
これは自由を知らせる福音だ
わたしは、自由への逃亡を決意する
そこはそこは、ユメのセカイ
「ホワイトアウトのむこうがわ」
しろきものは地にへと降り注ぐ
そのしろさは、すべてのものをオブジェに変えていく
白は無であり、死でもある
そして、白は再生でもあるのだ
緑の木々は樹氷へと変わり、水は氷へと生まれ変わる
丘は白くなだらかになり、視界は白くかわっていく
わたしはここで生きているのだろうか
それとも物として存在しているのだろうか
それはわからない
すべては、ホワイトアウトのむこうがわ
前回の詩はこちら
【自作詩集】赤い蛍/うちゅう/せかいのたんじょう/ばんねん/わがやの滝
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