【詩】たんぼ/そらが暗くなって/紅葉の道

たんぼ

【本文】
たんぼは、いのちの証明書


雑草みたいな稲をぼくたちは植える

稲がどんどん大きくなる

豊かな黄金色のコメができる

そしてなにもかもいなくなる

そして、新しいいのちをつなげる。

たんぼは、いのちの証明書
たんぼにはいろんないのちが生きている
ぴょんぴょん、あめんぼ
げろげろ、カエル
ぴかぴか、蛍
ちゅんちゅん、スズメ
みんなみんな生きている
みんなが生きた証で、たんぼは豊かになっていく。

たんぼは、いのちの証明書
そして、わたしは生きていく。



そらが暗くなって

【本文】
「そらが暗くなって」

そらが暗くなった。

街灯もないこの道をわたしは歩いている。
ビルも、コンビニもないこの道を……

空が暗くなった。

光もないこの道をわたしは知っている
秋風が、少しずつ冷たくなっていく。

天《そら》が暗くなった

風が何度も吹きぬける
秋の夜は、風は自由だ
さえぎるものなどなにもない。

そらが明るくなった。

冷たさとは別のぬくもりがわたしを包んだ。

わたしは、風のようになりたい。
強く自由な風になりたい。



「紅葉の道」

【本文】

わたしは、紅葉の道をすすむ。

少しずつ寒くなってきた。
みんな、厚着をしている。
上を見上げた。
夕焼けのキャンバスには、紅のカーテンが広がっていた。

わたしは、紅葉の道をすすむ。

かなり寒くなってきた。
もうみんなコートを着ている。
地面を見つめた。
地面には、紅のじゅうたんが広がっていた。

そして、冬になる。

わたしは回りを見回した。
そこには、白いお化粧をしたセカイが広がっていた。

わたしは、紅葉のみちをすすんでいく。

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【自作小説】バイバイ/異教徒と聖戦

「バイバイ」

「バイバイ」
 彼女が最後に発した言葉はこれだった。
 もう夢のなかでしか会えないあのひと。

 最後のくちびるの味はもうおぼえていない。
 お互いに若かった。どうして、あんなことになってしまったのか。わからない。

 たぶん、彼女もそう思っているはずだ。
 もう日曜日の夕方。

 窓から見える風景もどんどん暗くなる。
 夕飯の買い物にいかなければいけない。

 ぼくは外に出た。
 歩いていると、彼女と似た背格好のひとを目で追ってしまう。

 こんなところにいるわけがないとわかっているのに。
「大好きだったよ」
 突然、彼女にそんな風に言われた気がした。

 涙があふれそうになる。暗くなっていく街にむかって、叫びたかった。
 のどが痛くなるほど叫びたかった。

「  」

 街灯が自分をあたたかく包んでくれていた。



「異教徒と聖戦」

 今日、ぼくたちの村は、異教徒によって占領された。
 彼らは、自分たちの信仰の聖地を異教徒から取り戻すために、ぼくたちの家に攻めてきた。
 大人たちは、必死に戦ったが……。

 ぼくたちは奴隷となるようだ。
 家にあった財産はすべてもっていかれてしまった。
 村の代表だった村長さんが、敵の兵士たちによって壇上にあげられた。

「処刑前に、言い残したことはないか?」
 敵の兵士は、冷たく言い放つ。

「きみたちは、どうしてわれらの村を占領したのだ」
「それは、われらが神のためだ」

「“神”。それはわたしたちが、信じる神とは違うのか?」
「ああ、違う。おまえらの“神”は偽物の神だ。わたしたちが信じる神こそが、正真正銘の唯一神である」

「そうか。では、おまえたちに、真実を教えてやろう」
「真実?」
「わたしが、真の神だ」
 村長さんは笑っていた。

「異教徒の上、神を語る不届き者め」
 怒りの表情をあらわにした兵士は処刑の準備をはじめた。

「異教徒であるわしらも、お主たちが信じている神によって創られたのではないかな」
 村長さんはなおも口を開く。

「ええい、早くこの者の口を閉じらせろ」
「おまえたちは、いま、“神”を殺すのだ」
 刃が村長さんの首にむかった……。

-数百年後-
「あなたは神を信じますか?」
 駅でそんな宗教勧誘にあった。

(科学全盛の時代に、神とか信じるわけないでしょ)

 おれはスマホをみて、勧誘を無視した。
 おれは哲学者の言葉を思い出す。
「神は死んだ」

※小説家になろうにも投稿しています。
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【お知らせ】『幼残香』がランキング7位になりました!

小説家になろうに投稿中の、自作詩集『幼残香』が日間カテゴリランキング7位になりました(^^)/

いつも読んでいただいてありがとうございますm(__)m

はじめて書いたポエムなんですが、反響が結構あって嬉しいかぎりです!
風邪も治ってきたので、また週末にボチボチ作っていきたいと考えております。



【詩】トリック・オア・トリート

【本文】
トリック・オア・トリート

おじいちゃんにそう言った。
おじいちゃんは、少し苦笑いした。
おれの若いころは、こんな祭りなんて、なかったのにな。
そう言って、お菓子をくれた。
酢昆布だった。

トリック・オア・トリート

おばあちゃんにそう言った。
おばあちゃんは、微笑んだ。
まあ、かわいらしいわ。
そう言って、お菓子をくれた。
ソースせんべいだった。

トリック・オア・トリート

もらったお菓子は、テレビでみるようなものではなかった。
期待していたものとも違った。
でも、

最高のハロウィンだった。

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【詩】ダンボールのなかのきぼう/青い空

ダンボールのなかのきぼう/青い空

【本文】
「ダンボールのなかのきぼう」

 いったいなにが入っているのでしょうか?
 あのダンボールには……

 おかし?
 おもちゃ?
 ようふく?

 開かなくてはわかりません。
 だから、わたしにもわかりません。

 でも、ひとつだけわかります。

 段ボールの中には希望がつまっているんです。
 おかしでも、おもちゃでも、ようふくでも……。

 それは、まるでわたしの未来のように……。

「青い空」
 昨日も空は青かった。
 わたしが空を見上げたとき……

 今日も空は青かった。
 わたしが空を泣きながら見上げたとき……

 明日も空は青いんだろうな、
 わたしのあしもとは赤く染まっているのに……。

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【自作小説】パン屋のおやじ

【自作小説】パン屋のおやじ(ヒューマンドラマ)

【本文】
 おれは小さいパン屋を経営している。
 超有名店というわけではないが、家族3人が食べていく分には問題ない。

 いわゆる、「町のパン屋さん」というのがしっくりくる。
 朝は4時に起きて、5時から勤務開始。

 サラリーマン時代によく遅刻していた俺が、よく続けられていると感心している。
 脱サラをする際は、妻が大反対すると思っていた。でも、こころよく賛成してくれた。

「いいじゃん、私パン好きだし」
「軽っ」
 思わず吹き出した。

 経営が安定するまではスーパーでバイトをしてくれて、今では仕込みの手伝いまでいる。
 口にはださないが、自慢の妻だ。

 生地をこねて、オーブンで焼く。
 同時並行で、バイトくんがパンの具のカレー、あんこ、クリーム、ウィンナー、焼きそばなどを用意する。
 バイトの山内くんも最近、慣れてきた。とても、頼りになる。

 そして、パンが焼きあがった。この瞬間、とても幸せな香りが調理場を包む。
 小麦とバターが作り出すあの幸せな香り。

 妻や山内くんといつもニヤニヤしてしまう時間だ。
 開店時間まで、あと15分。
 店にパンを並べはじめる。

 息子もそろそろ学校にいく時間だろう。
 最近、「お父さんの後を継いで、パン屋になりたい」といっているらしい。
 子どもに自分の仕事が認められるというのは、親冥利につきる。

 外では学生さんやサラリーマンの姿が見えてきた。
 もうすぐ、開店だ。
 今日も自分は生きていると感じている。

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【小説】夕暮れの墓前(ヒューマンドラマ)

夕暮れの墓前(ヒューマンドラマ)

【本文】
 わたしはいま妻の墓の前に立っている。
 妻は3年前に死んだ。突然の死だった。

 かえるの声と田んぼの野焼きの煙臭さにあふれたさびれた墓地。
 まわりには誰もいない。

 私は、持ってきた日本酒のふたを開ける。
 妻に飲みすぎだといつもいわれていた酒だ。本当になつかしい。

 これが最後の酒となる。安酒だが、最後はこれしかない。
 意識がどんどん遠くなる。ただ眠い。

「苦労をかけたな」
 いないはずの妻にわたしはこうつぶやいた。 

 落日だけがわたしと一緒だった。

※小説家になろうにも投稿しています。

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【詩】難問

「難問」

難しいことを考えるのは、偉いことだ。

みんなそう思ってる。

学者さん、政治家さん、弁護士さん、お医者さん……。

偉い人は、みんな難しいことを考えている。

どうして、みんなは難しいことを考えるのだろうか?

それは、偉いからだ。
偉いから、難しいことを考えなくてはいけなくなるのだ。

じゃあ、この世界はすごいのだろうか?
たくさんの偉い人が作ったこのせかいは……。

せかいはドンドン難しくなる。
それは本当に偉いせかいを作っているのだろうか?

※小説家になろうにも投稿しています。

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【書評】『老子』(講談社学術文庫)

『無知無欲な人生とは何か?』
(感想)
さて、私が一番好きな思想書『老子』(講談社学術文庫、金谷治)の感想です!。年末に毎回読み返しております。これを読み返さないと年は越せないという風物詩。

中国古代の思想書というと『論語』がまず第一にくると思いますが、自分は断然『老子』派です。『論語』は思想書というよりも、なんだか政治学に近いものを感じてしまい少し苦手なんです。人をどうのように組織し、統率するか。そんな風に読めてしまい、変人で自由を愛する私はその外にいたいと思ってしまう。なんとなく権力者側の話みたいで、縛られる側の自分にはピンと来ないのかもしれません。

そう、そんな人の受け皿になるのが『老子』。「権力」や「人間関係のしがらみ」、そこから距離を置く思想。いらないものを捨てていく思想、それが『老子』だと考えています。

この考え方って仏教とかとかなり近しいものを感じます。まあ、この考え方は森三樹三郎の『老荘と仏教』(講談社学術文庫)の受け売りなんですが(笑)

さて、『老子』の中で好きな一文を二つ引用してみたいと思います。

天長地久。天地所以能長且久者、以其不自生、故能長生。

(書き下し)
天は長く地は久し。天地の能く長く且つ久しき所以の者は、其の自ら生ぜざるを以て、故に能く長生す。

(訳)
天は永遠であり、地は久遠である。天地の大自然がそのように永久の存在を続けていけるのは、天も地も無心であって自分で生き続けるようなどとはしないから、だからこそ長く生きつづけることができるのだ。
(32-33頁)

為学日益、為道日損。損之又損、以至於無為。無為而無不為。

(書き下し)
学を為せば日々に益し、道を為せば日々に損ず。これを損じて又た損じ、以て無為に至る。無為にして為さざるは無し。

(訳)
学問を修めていると、その知識は一日一日と増えてくるが、「道」を修めていると、一日一日とその知識は減ってゆく。減らしたうえにまた減らし、どんどん減らしていって、ついにことさらなしわざのない「無為」の立場にゆきつくと、そのしわざのない「無為」のままでいて、それがすべてのことをりっぱになしとげるようになる。
(153-154頁)

自分の持つ執着をどんどん捨てていくことの魅力。「エゴ」というものが自分をどこまでも苦しめている。だからこそ流れに身を任せることも必要なのだと読んでいてはじめてわかりました。夏目漱石ではないけど「則天去私」という心境はこういうものなのかもしれません。

 

おすすめ度 100/100



【詩】おとなって

「おとなって」

おとなって、意外とすごくない。

小さい頃は、おとなってすごかった。
すごいものだと思ってた。
でも、それは幻想。

おとなって、意外とすごくない。
夢から覚めたとき、もうわたしはおとなだった。

おとなって意外とすごくない。
可能性がなくなっていくのだから。
それにきがついてしまうのは、わたしがおとなだから。

おとなって意外とすごくない。
それがわかったとき、おとなはおとなになる。

おとなって意外とすごくない。
そして、その時思うのだ。

子供って意外とすごいじゃん、と。

 

※小説家になろうにも投稿しています

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