【自作小説】勇者旅立つ/新しいロボット

勇者旅立つ(ヒューマンドラマ)

【本文】
「それでは勇者よ、この道具をもって旅立つがよい。そちが魔王をうち滅ぼしてくることを期待しておるぞ」

 わたしは定型文となったいつものセリフを口にする。最初こそ気持ちをこめて言っていたが、今ではほんの義務的なセリフだ。

 ふくろに入っているのは、「剣」と「盾」、「薬草3枚」、「銀貨10枚」だ。最低限の装備と金。これで魔王軍と戦えというのは無茶振りだと自分でもわかっている。総額、銀貨20枚で世界を救えというのだからお笑いだ。

 この豪華な玉座の間から、いったい何人の勇者が旅立ったかもうおぼえていない。

「すでに半数以上の勇者が消息を絶っている」と大臣はいっていた。罪深いことをやっている。

 だが、なにもやらないわけにはいかない。このままでは民は魔物に苦しみ、怒りの矛先はわたしにむかってくるだろう。パニックによって人類は自壊し、魔物が支配する時代になる。

 すでに軍隊はなんども甚大な被害をうけている。もう打つ手はほかにない。月に銀貨数十枚を使い、民に希望をみせているというのが現実だ。

 政治パフォーマンスに若き勇者を使い、そして若者の命を浪費する。

「わたしは地獄に落ちるな」小声でつぶやく。

 それには気づかず勇者は誇らしげに階段を下りていった。



新しいロボット(SF)

【本文】
 テレビでニュースが流れていた。

「本日、アイザック社が新作のロボットを発表しました。これは人工知能ををもち、自律行動が可能です。また、人間以上に頑丈で、そしてものすごい力をもっています。技術革新によって1体20万円程度の価格となる予定だと発表されました。この発明によって、産業界は大きな変化が起きるでしょう」

 それは、本当に人間のようなロボットだった。
 精密な人工知能をもち、問題が発生したら自分で解決できてしまう。危険な場所でも活動できる。

 ただ、感情だけが欠如した人間。

 そんなふうにわたしは思った。
 彼らは危険な工事現場や原子炉などで、活躍することになるだろう。
 そして、量産化され壊れたら、20万円で交換されてしまうロボット。

 これから、かれらは量産体制に入り、危険な作業に従事し、
 そして、ほとんどが壊れていく。そう、それはかれらがロボットなのだから。

「まるで奴隷だな」とわたしはつぶやいた。
 これから生まれる英雄たちにできることなら、幸あらんことを。

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