【自作小説】不老不死の薬/革命家

不老不死の薬(歴史)

【本文】
「皇帝陛下、お望みの薬が出来上がりました」
 博士はわたしにひざまずいてそういった。
 運ばれてきたのは、それはとても輝かしい赤い個体であった。

「これにはどのような効果があるのかね?」
「おそれながら申し上げます、陛下。こちらはとある山奥で、とれた鉱物になります。熱すれば銀のように、輝かしいものになります。言い伝えによれば、これを服用することで、大地の力を体に蓄えることができるということです。さすれば、体の老化は止まり、体が鉱物のように頑丈となるでしょう」

「なるほど、それはすばらしいな。服用させていただこう。そちも飲むがよい」
 不老不死。
 なるほど体を老いることのない金属にしてしまえばよいのか。
 さすがは天才と呼び名が高い博士だ。

 ※
 1年後。

 はかせはしんだ。

 どうやらあの「くする」をのむのが、「おすかった」ようだ。
 
 わたしは「かかせ」よりも、わかい。

 ぜったいにでいじょうぶだ。

 すこし、はらがいはい。

 はやく、あの「くする」をのまなくては。



革命家(ヒューマンドラマ)

【本文】
7月9日

 俺たちは革命を目指している。

 おとなたちは、なにも変わろうとしない。

 世界の不公平には目をつむり、自分だけがよければそれでよいと本気で考えている。

 俺は、俺たちは、みんなが自由で公平な世界を創るのだ。

 あんな大人たちとは違うのだ。

 そのために、俺たちはデモをおこなうことなった。

 世界から不公平をなくすためのデモだ。

「政府がこれを認めるまで、おれたちは戦うぞ」と演説をすると、
 仲間たちが大きな歓声をあげてくれた。
 まるで、世界がひとつになったみたいな高揚感だ。

7月16日

 親からもらった仕送りが少なくなった。
 今月は少しピンチだ。
 でも、仲が良いメンバーとの飲み会は楽しい。

「この前の演説よかったな。警察と乱闘騒ぎになってけが人もでたけど」
「大義のためなら、多少の犠牲はしかたないよ。今度は国会に乗り込もうと思っている」
「いいな。おれも一緒にいくぜ」
 みんな威勢のよいことを言って楽しんだ。

 俺たちがいま、世界の中心にいる。多幸感に包まれた飲み会だった。
 
 ※

 ある日、わしは大学時代の日記をみつけた。とてもなつかしい思い出だ。
 しかし、結局、世界は変わらなかった。

 俺たちは普通に卒業して、普通に働いて、普通に退職した。
 いまでは年金暮らしである。

 世の中は不況が問題になっている。テレビのニュースでは、若者の貧困問題が特集されていた。
「まったく、さいきんの若者は情熱が足りんな」
 老いた革命家はそうつぶやいた。

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